金融裁判事例

ファクタリング業務の法的評価
~貸金契約か債権譲渡契約か~

近年、ファクタリング業務の法的評価が裁判で問題になるケースが多々あります。ファクタリングは「貸金契約」なのか「債権譲渡契約」なのか、という点が争いになるのです。


貸金契約であれば、「利息制限法」が適用されるので、ファクタリングの手数料は違法となり「過払い金」などが発生する可能性も。貸金業登録をせずに営業しているファクタリング会社は違法業者となってしまうでしょう。


一方で「債権譲渡契約」であれば、2~20%程度のファクタリング手数料は基本的に合法であり、何ら問題は生じません。


裁判では、ファクタリングを貸金契約と認定するものと債権譲渡契約と認定するものにわかれます。


この記事ではどういったケースでファクタリングが貸金契約とされ、どういった条件であれば債権譲渡契約となって合法とされるのか、法的評価に踏み込んで解説します。

1.貸金契約と債権譲渡契約の違い

まずは貸金契約と債権譲渡契約の違いについて、簡単にみておきましょう。

1-1.貸金契約とは

貸金契約とは、お金を貸し付けて返還約束をする契約です。

お金を貸し付けるときには「利息」をとってもかまいません。ただし貸金契約には「利息制限法」が適用されるので、利率は一定範囲内に制限されます。

利息制限法を超える利息を設定しても、無効です。


また営業行為として貸金業を行うには「貸金業者」として登録しなければなりません。登録しないで貸金業を行うのは貸金業法違反の「無登録営業」であり、「闇金」として厳しい刑事罰が科されます。


ファクタリング業者は貸金業登録していませんし、利息制限法を超える割合の手数料をもらっているのが一般的。ファクタリング貸金契約と認定されたら、現在のファクタリング営業は成り立たなくなるでしょう。

1-2.債権譲渡契約とは

債権譲渡契約とは、売掛金などの「債権」を第三者へ譲る契約です。通常は債権譲渡と引換に「譲渡代金」を受け取ります。たとえばA社がX社に対する100万円の債権をB社に譲渡する場合、B社から譲渡代金として80万円を受領。その後X社から支払われる100万円はB社のものとなります。


債権譲渡契約には利息制限法も貸金業法も適用されません。利息制限法を超える割合の手数料をとっても違法ではありませんし、貸金業登録も不要です。

ファクタリングが債権譲渡契約に該当するなら、現在のファクタリング業者の営業モデルは合法となります。

2.ファクタリングが貸金契約か債権譲渡契約かで裁判が頻発!

実は最近、ファクタリングが「貸金契約」か「債権譲渡契約」かを巡る裁判が後を絶ちません。


よくあるのが、ファクタリングを利用して資金調達をした中小事業者が、後日ファクタリング業者を相手に「実質的には貸金契約である」と主張して、お金の返還を求めるケース。

破産管財人がファクタリング会社を訴える事例もあります。


ファクタリングを利用しておきながら回収した債権をファクタリング業者へ支払わないので、ファクタリング業者の方からユーザー企業へ支払いを求めて裁判を起こすケースも少なくありません。


ファクタリングの法的性質(貸金契約か債権譲渡契約か)は今後の中小企業の資金調達において、非常に重要な論点といえるでしょう。


以上を前提に「ファクタリングは基本的にどういった契約になるのか」「ファクタリングが貸金契約になるケース」など、個別の課題について解説していきます。

3.ファクタリングが貸金契約になるケースとは

ファクタリングは基本的に「債権譲渡契約」として契約されます。

ファクタリング業者とユーザー(資金調達を受ける中小事業者)との間で交わされる契約書には「債権譲渡契約」と書いてあります。

ただし形式上は債権譲渡契約でも「実質的には貸金契約」と判断されれば法的に「貸金契約」の扱いとなり、違法になる可能性も。


ではファクタリングが貸金契約になるのは、どういったケースなのでしょうか?

3-1.ファクタリング業者が回収不能のリスクを負っているか

ファクタリングが貸金契約とされやすいのは「ファクタリング業者が回収不能のリスクを負っていない場合」です。

つまり譲渡された債権が不払いとなったとき、誰がそのリスクを負担するかが問題となります。


債権譲渡契約であれば、第三債務者が支払をしないときのリスクは当然、譲り受け会社が負います。債権を譲り受けた以上、自分で債権を回収しなければならないのが原則だからです。この「回収不能リスク」を含むからこそ、債権譲渡契約では高めの手数料をとることが許されます。


一方で、貸金契約の場合には第三債務者が支払うかどうかに関係なく、ユーザーは債権者へ支払をしなければなりません。お金を借りておいて「予定していた債権を回収できなかったので返済はできません」といっても通用しないのは明らかです。貸金契約の債権者が回収不能のリスクを負わないにもかかわらず、高額な手数料を取ることは認められません。利息制限法によって厳しく料率を制限されます。


以上より「第三債務者が支払わないとき(回収不能)のリスク」を「ファクタリング会社」と「ユーザー企業」のどちらが負っているかにより、ファクタリングの法的性質が決定されます。まずはこの基本を押さえましょう。

3-2.「買い戻し特約」がついていると貸金契約になりやすい

ファクタリング契約が貸金契約と認定されやすいのは「買い戻し特約」がついているケースです。

買い戻し特約とは「債権が回収不能となった場合、ユーザー企業は売却した債権をファクタリング会社から買い戻さねばならない」とする特約です。

たとえばA社がX社に対する100万円の債権を80万円でB社に売却し、回収できなかったとしましょう。この場合、X社が100万円を支払わない場合、A社は80万円を払ってB社から債権を買い戻さねばなりません。


このような契約内容であれば、B社は何のリスクも負わないといえます。回収できれば100万円が手元に入ってきますし、回収できなければ80万円を返してもらえるからです。


そこで買い戻し特約がついていると、ファクタリングが「貸金契約」と同視されて違法とされます。

3-3.買い戻し特約なしでも「貸金契約」と認定された裁判例(大阪地裁平成29年5月14日)

買い戻し特約がついていなくても、裁判でファクタリング契約が「貸金契約」と認定された例があります。

その事案では、ファクタリング業者は債権譲渡の代金のほとんどを「回収後」に支払う約束になっていました。回収できなければ、ユーザーに支払う譲渡代金を減額できる内容になっていたのです。


具体的にはユーザー企業が1,000万円の債権を990万円でファクタリング業者へ売却しました。このときファクタリング業者はユーザー企業へ100万円しか払いません。残りの890万円は「回収後」まで持ち越されたのです。回収できなかった場合には、890万円を減額することが可能とされました。そうなると、ファクタリング業者はほとんどリスクを負わずに済むでしょう。


裁判所は本件ファクタリング契約を「実質的に貸金契約」と認定しました。


このように、買い戻し特約がついていなくても、実質的にファクタリング業者が回収リスクを負わない内容になっていたら「貸金契約」と認定されます。ファクタリングが違法とされる可能性が高くなるので注意しましょう。

3-4.他に考慮される要素

ファクタリング契約が貸金契約か債権譲渡契約かを判断する際、以下のような要素も考慮されます。

第三債務者への審査を行ったか

債権譲渡においては、債務を支払うべき第三債務者の信用性が非常に重要です。

一方貸金契約の場合、ユーザーの信用性が問題なのであって、第三債務者の信用性はほとんど問題になりません。

よって「第三債務者への審査が行われたかどうか」が重要なファクターとなります。

しっかりと第三債務者への審査が行われた上で債権譲渡の金額が決められたなら、債権譲渡契約と認定される可能性が上がります。


第三債務者の審査において重要となるのは、以下のような項目です。

第三債務者の事業規模、内容、資金力
事業規模が大きく安定していれば、支払われる可能性が高まります。事業内容について、斜陽の業界ではなく業績悪化の懸念もなければリスクは小さくなるでしょう。資金力の高い企業の場合にも安心感が高いといえます。
これまでの不払いの記録
これまでの取引で特に不払いの経緯がなければ、比較的安心です。
債権の性質
キャンセルされやすい債権、相殺される可能性のある債権などは不安定といえます。
倒産の危険性
第三債務者の業績が悪化しており倒産の危険があれば、リスクが高いといえます。債権譲渡で高めの手数料を割り引かれてもやむをえないといえるでしょう。

3-5.譲渡人の審査はしない方が無難

もう1つ重要となってくるのが「ユーザー(譲渡企業)の審査」です。


「譲渡企業の審査をしたら、ファクタリング契約は必ず違法」というわけではありません。ただ貸金契約に近づいてしまう可能性があります。なぜなら貸金契約をするときには、必ずユーザー企業の審査をするからです。

また債権譲渡契約の場合、第一次的には第三債務者がきちんと対応すれば良いのであり、譲渡企業の信用性はさほど大きな要素でないともいえます。

そこで譲渡企業の審査をしていると、貸金契約と認定されやすい傾向があります。


ファクタリング事業を合法的に行いたいなら、譲渡会社の審査はあまり積極的に行わない方が無難でしょう。

3-6.給与ファクタリングは貸金契約になりやすい

同じ「ファクタリング」でも、事業者のファクタリングと給与所得者のファクタリングはまったく異なります。給与ファクタリングについては多くのケースで「貸金契約」とされ違法となるので注意しましょう。

そもそも労働基準法により、給料は、労働者本人へ現金で全額支払われなければなりません。

給料は「債権譲渡を予定していない」特殊な債権なのです。

このような譲渡禁止の債権を無理矢理に債権譲渡する「ファクタリング」には、当然大きな問題とひずみが発生します。

金融庁も給与ファクタリングについては貸金契約に該当すると見解を発表しているので、「給与ファクタリングは違法」といっても過言ではありません。


ただしこれはあくまで「給与ファクタリング」に限った考えであり「事業者のファクタリング」にはあてはまりません。給与ファクタリングが違法だからといって事業者のファクタリングまで違法というわけではないので、混同しないようにしましょう。

4.2者間ファクタリングは違法とは限らない

事業者のファクタリングの合法性を検討するとき、頻繁に問題となるのが「2者間ファクタリング」です。

ユーザー企業からは「2者間ファクタリングの場合にはファクタリング業者が回収リスクを負っていないので貸金契約である」と主張されるケースが多々あります。


しかし現実には、2者間ファクタリングだからといって貸金契約になるとは限りません。多くの裁判例では、2者間ファクタリングも「債権譲渡契約」と認定されてファクタリング業者側が勝訴しています。
以下で2者間ファクタリングにかかわる問題点を解説します。

4-1.2者間ファクタリングとは

2者間ファクタリングとは、ユーザー企業が債権を自主回収するタイプのファクタリングをいいます。


一般的な債権譲渡においては、債権回収するのは譲受人。いったん譲り受けた以上は自分の責任で債権回収しなければなりません。当然、回収できなかった場合のリスクは譲受人が負います。

また債権譲渡に際しては、第三債務者へ新しい債権者を知らせるために通知を行ったり登記したりします。このことで第三債務者が間違って以前の債権者(譲渡会社)へ支払をしないように注意喚起するのです。


ところが中小事業者のファクタリングの際にこの一般的なスキームを適用すると、問題が発生します。第三債務者へ通知することにより、取引先へ「ユーザー企業がファクタリングで資金調達した事実」を知られてしまうからです。「資金繰りに困っているのだ」と知られたら、その後の取引や信用に影響するでしょう。そこで多くの中小事業者は「第三債務者へ債権譲渡を知らせず、自社で回収したい」と希望します。


ここで登場するのが2者間ファクタリング。

2者間ファクタリングの場合、債権はユーザー企業が自主的に回収します。第三債務者へは通知せず、債権譲渡登記もしません。ユーザーが回収したお金をファクタリング会社へ渡す仕組みとなります。

このように「ユーザー企業」と「ファクタリング会社」の2者しか登場しないので、「2者間ファクタリング」とよばれます。

4-2.「2者間ファクタリングは違法」と主張されやすい

ユーザー企業とファクタリング業者の裁判では、ユーザー企業が「2者間ファクタリングなので貸金契約である」と主張する例が非常に多くなっています。2者間ファクタリングの場合、譲受人であるファクタリング会社が自社で債権回収をしないからです。

「自社で回収しないのだから、ファクタリング会社は回収リスクを負っていない」という理屈です。

4-3.2者間ファクタリングだから違法とはいえない

では2者間ファクタリングは違法なのでしょうか?

ほとんどの裁判例は、そういった考え方をしていません。

2者間ファクタリングであっても、実際に第三債務者が支払わなかったときのリスクはファクタリング会社が負うからです。


たとえばA社がX社への100万円の債権をB社へ80万円で譲渡したとしましょう。

X社へは債権譲渡通知をせず、A社がX社から100万円を回収し、B社へ支払う約束としました。いわゆる「2者間ファクタリング」です。その後、X社が倒産して100万円を回収できなくなりました。

このとき、誰がリスクを負うのでしょうか?

それはB社(ファクタリング会社)です。

A社は100万円を回収できなかったため、B社へ払うことができません。B社としてはA社へ80万円を渡しておきながら100万円を回収できないので、80万円の損失が発生してしまいます。買い戻し特約もついていないのでリスクを全面的に受けなければなりません。


このように2者間ファクタリングであっても、買い戻し特約がついているなど特殊事情がない限りはファクタリング会社が回収不能リスクを負います。


「2者間ファクタリングではユーザーが債権回収するのでファクタリング会社はリスクを負わない」というのは重大な勘違いなので、そのような考えをしないように充分ご注意ください。

5.手数料は暴利とはいえない

ファクタリング契約では、手数料を債権額の2~20%(ユーザー企業の受取金額は80~98%)とするケースが多数です。利息制限法にあてはめると大幅に超過してしまうケースも少なくありません。

裁判ではユーザー企業側から「ファクタリングの手数料は高い、暴利である」との主張もなされる例が多々あります。

しかしファクタリング契約では、上記で示したようにファクタリング会社が多大な「回収不能リスク」を負っている以上、これは決して暴利ではありません。

実際、多くの裁判例でも「ファクタリングの手数料は暴利ではない」と認定され、ユーザー企業の主張が排斥されています。

債権の財産的価値は極めて低い

ファクタリングの手数料が暴利ではない理由は「譲渡される債権の財産的価値が極めて低いから」です。

ここでいったんファクタリングを離れて「債権を担保とした融資」のケースを考えてみてください。

たとえば1億円の債権を担保として融資を受けようとしたとき、1億円を借りられるでしょうか?

もちろんそのようなことは不可能です。不良債権となるリスクがあるので、高くても2~3,000万円しか融資してもらえないでしょう。低い場合には2~300万円しか借りられないケースもあります。つまり債権を担保とした融資なら「債権額の2~20%しか借りられない」のが通常です。これほどまでに「債権はリスク資産」であり「財産的価値が低い」のが実情といえます。


そのような価値の低い債権を譲渡するファクタリングにおいて、買取金額が高くならないのは「当然」といっても過言ではありません。


むしろファクタリングの場合、債権額の7~9割くらいの譲渡金額を受け取れるので、融資と比較して「ユーザー企業に有利」ともいえるでしょう。


資金調達を必要としている中小企業を救うため、ファクタリングは現実に必要とされています。業務内容には正当性があるといえ、「暴利」や「公序良俗違反」といった批判はあてはまらないでしょう。

6.正当な2者間ファクタリングの実務

合法的に2者間ファクタリングを行うときには、以下のような実務対応にするのが望ましいでしょう。

6-1.担保はさせない

ユーザー企業に第三債務者の支払能力について担保させてはなりません。

担保をさせると買い戻し特約をつけるのと同様となり、ファクタリング会社が回収リスクを負わない状況につながってしまうためです。

6-2.債権回収をユーザーに委任する

ユーザー企業が信用維持のために2者間ファクタリングを希望したら、債権回収事務をユーザー企業へ委任します。

このとき、委任関係を明確にするため、債権譲渡契約書とは別途「委任契約書」や「事務委託契約書」を作成しましょう。

ユーザー企業には、一般的な委任契約と同様以下のような義務を課します。

善管注意義務
報告義務
権限外行為の禁止

また債権回収をユーザー企業自身が行うのは、ユーザー企業自身の申出によるものであることも明示するとよいでしょう。

6-3.ユーザー企業は委任契約を解除できる

ユーザー企業側が、委任契約を自由に解除できる内容にすることも大切です。

このことにより「ファクタリング会社が危険を避けるためにユーザー企業へ回収事務を押しつけた」と主張されるのを防げます。


なお委任契約が解除されたからといって、おおもとのファクタリング契約(債権譲渡契約)まで解除されるわけではないので、注意しましょう。

6-4.ユーザーが損害賠償義務を負う場合

ユーザーが損害賠償義務を負うケースについても定めましょう。

ユーザー企業が虚偽を述べた、重大な事実を隠蔽した
架空の債権を売却した
すでに第三者へ売却しているのに二重譲渡をした
他人の財産を売却した

6-5.回収不能となった場合の対応

回収不能となった場合には、ユーザー企業から詳細の報告を受けます。

その上で委任契約を解約し、後はファクタリング会社自身の責任で第三債務者へと請求を行い、自社で回収を目指します。


このように対応していれば、たとえ2者間ファクタリングであってもファクタリング契約が貸金契約と認定されたり違法とされたりする危険はほとんどないでしょう。

7.ファクタリングの多くは債権譲渡契約

以上のように、多くのファクタリング契約は「債権譲渡契約」となります。

ただし買い戻し特約がついているなど一部の特殊なケースでは貸金契約とされます。

給与ファクタリングも貸金契約となりますが、これは事業者のファクタリングとはまったく異質のものなので、混同しないようにしましょう。


裁判例では、「ファクタリングは貸金契約」と主張するユーザー企業の主張が排斥され、ファクタリング会社が勝訴するものが相次いでいます。


今後ファクタリングを利用したい事業者さま、ファクタリング業者さま、法律家の方などファクタリングに関わる機会があるなら、ぜひ参考にしてみてください。

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