金融裁判事例

ファクタリングは貸金契約ではなく
取引履歴の不開示は不法行為にならないと
判断された裁判例

ファクタリングを利用して資金調達をした会社が、後になって「ファクタリングは実質的に貸金契約であり、違法・無効」と主張し始めるケースが後を絶ちません。

実際には多くの裁判例において「ファクタリングは貸金契約ではない」と判断され、ファクタリング会社側が勝訴しています。

今回はファクタリングが貸金契約ではなく、ファクタリング会社による取引履歴不開示も貸金業法違反にならないと判断された裁判例をご紹介します(東京地方裁判所令和2年9月18日)。

1.事案の概要

1-1.A社とB社、C社のファクタリング契約

運送業を営むA社はファクタリングを利用して資金調達を行いました。利用されたファクタリング会社は2社で、それぞれ売掛債権の買取率は70~80%程度とされました。
どちらのファクタリング契約においても、A社が自力で債権を回収し、ファクタリング会社であるB社とC社へ支払う内容になっていました。つまり「2者間ファクタリング」が利用されたのです。

1-2.A社による売掛金返還請求、慰謝料請求

A社はファクタリング契約にもとづいて売掛債権を回収し、B社に対し約定通りに支払いました。ところがもう1つのファクタリング会社であるC社に対しては、「ファクタリング契約は無効」などと主張して回収した売掛金125万円を引き渡しませんでした。

またA社はB社に対しても「ファクタリング契約は実質的に貸金契約である。利息制限法を大幅に超過する高利の契約であり、公序良俗に反して無効」と主張し、いったん支払った売掛金の返還を求めました。さらに貸金業法にもとづいて、取引履歴の開示請求も行いました。

B社が取引履歴の開示に応じなかったところ、A社は「精神的苦痛を受けた」として慰謝料10万円を請求しました。

1-3.C社による売掛金支払い請求

A社がC社に回収した売掛金を支払わなかったため、C社は反訴を提起してA社に対し、ファクタリング契約にもとづいて売掛金125万円の支払いを請求しました。

このように、本件はA社がB社へ売掛金と慰謝料の支払を求める一方で、C社がA社へ売掛金の支払いを求めた事案です。

以下で裁判所の判断内容をみていきましょう。

2.裁判所の判断

2-1.ファクタリング契約は貸金契約ではない

まず、本件で締結されたファクタリング契約が「貸金契約」に該当するかどうかが問題です。
もしも貸金契約に該当するなら「利息制限法」が適用されるので、手数料の高いファクタリング契約は違法となり、無効になる可能性が高くなるためです。

A社は「本件の契約は売掛債権を担保とする貸金契約である」と主張しましたが、裁判所は以下の点を重視し、「本件契約は貸金契約ではなく債権譲渡契約である」と認定しました。

本件契約は契約書において「債権の売買契約」であると明記されている
契約書の文言上も「売掛金の譲渡は担保目的でない」ことが明らかであり、貸金契約ではなく債権譲渡契約に近いと判断されました。
債権の買取価額は、第三債務者に着目した審査基準によって決定されている
売掛金の第三債務者ごとに審査基準があると、債権譲渡契約に近くなります。貸金契約であれば第三債務者の個性とは無関係に一律で金額が決定されるはずだからです。
ファクタリング会社は、第三債務者の「無資力リスク」を背負っており、A社に対する返還請求権も設定されていない
第三債務者が払えないときの無資力リスクをファクタリング会社が負っているなら、債権譲渡契約に近くなります。ここで、第三債務者が払えないときにA社へ返還請求できる特約がついていたら貸金契約と判断される余地もありますが、本件ではそういった事情はありませんでした。
債権譲渡の対抗要件が具備されていなくても、問題にならない

本件では2者間ファクタリングが利用されたため、第三債務者への通知が行われず債権譲渡の対抗要件が具備されていませんでした。そこでA社は「貸金契約」であると主張した経緯があります。裁判所は「対抗要件が具備されてないとしても、B社としてはいつでも債権譲渡通知書を送ることはできたのであるから、貸金契約とはいえない」と判断しました。

以上のような事情から、本件の契約は貸金契約ではなく「債権譲渡契約」と認定されました。

2-2.ファクタリング契約は公序良俗に反しない

A社は、本件契約が実際には貸金契約であるにもかかわらず、債権譲渡契約を偽装して利息制限法や出資法の金利の規制を逃れるものとして、公序良俗違反を主張しました。

裁判所は上記のように、本件契約については貸金契約ではなく債権譲渡契約であると認定しました。そこで金利の規制を逃れるものとはいえず、公序良俗違反にならないと判断。A社による「公序良俗違反」の主張を認めませんでした。

以上のように、本件契約は貸金契約ではなく債権譲渡契約であり、公序良俗違反でもないので有効とされ、A社によるB社への売掛代金返還請求は認められませんでした。

2-3.慰謝料は発生しない

本件でA社はB社に対し、貸金業法にもとづいて取引履歴の開示請求を求めています。B社は「そもそも本件は貸金契約ではないので貸金業法は適用されない」と主張し、取引履歴を不開示にしたところ、A社はこの対応によって精神的苦痛を受けたとして慰謝料10万円を請求しました。

この点についても裁判所は「本件契約は貸金契約ではないので、B社に取引履歴開示義務はない」と判断し、A社による慰謝料請求を認めませんでした。

2-4.A社はC社に売掛金を支払う義務がある

A社はC社とファクタリング契約を締結して資金調達を受けたにもかかわらず、回収した売掛金をC社へ支払っていませんでした。そこでC社は債権譲渡契約にもとづき、A社へ回収した売掛金125万円の支払いを求めました。
A社は「本件契約は実質的に貸金契約なので公序良俗に反して無効であり、代金を支払う必要はない」と主張。
しかし裁判所は本件契約を「債権譲渡契約として有効」と認定したので、A社に対して契約通り、回収した125万円の支払命令を下しました。

以上のように、本件ではファクタリング会社側が全面勝訴したといえます。

3.本件からいえること

本件では「2者間ファクタリングが貸金契約になるのか」が主な問題となっています。
裁判所は「契約書の文言に債権譲渡と書いてあり、担保目的ではないことが明らかになっている」「第三債務者の個性に着目して債権額が審査されている」「対抗要件はいつでも具備することができた」「ファクタリング会社が無資力リスクを負担している」ことを重視し、貸金契約ではなく「債権譲渡契約」と認定しました。

中でも特に「ファクタリング会社が無資力リスクを負っていた」点が重要です。もしも本件でもファクタリング会社が無資力リスクを負わず、「不払いがあったときにはA社へ資金の返還請求ができる」という「返還請求特約」が入っていたら、「貸金契約」と認定された可能性が充分にあります。
ファクタリング契約が貸金契約となるか債権譲渡契約となるかのメルクマールになるので、押さえておきましょう。

全国でファクタリングに関する裁判が起こっていますが、ファクタリング会社側が勝訴する事例が少なくありません。ファクタリングの利用を検討される方は、ぜひ参考にしてみてください。

まずは無料相談をお試しください。

お申し込み・お問い合わせはこちら