金融裁判事例

ファクタリング利用会社からファクタリング会社に対する
「不当利得返還請求」が認められなかった事例

このブログでは、日々「ファクタリング」に関する裁判例を見つけてご紹介しています。
ファクタリングとは債権譲渡を利用した資金調達方法です。

最近では「ファクタリングは貸金契約である」と主張し、利息制限法を適用してファクタリング会社へ過払い金請求するユーザー企業が目につきます。

今回はあるファクタリング利用企業がファクタリング会社へ「不当利得返還請求(過払い金請求)」を行ったけれども認められなかった裁判例をご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

1.事案の概要

本件の原告は土木物流などを主たる事業とするA社です。
ファクタリング会社であるB社で6回にわたってファクタリングを利用し、計4245万円分の売掛金を債権譲渡しました。手数料が差し引かれたためA社が受け取った金額は3603万円です。

ところが後日、A社はB社に対し「本件契約は実質的に貸金契約」であると主張して「利息制限法」を適用し、597万4309円の過払い金が発生していると主張。そのうち180万円の支払いを求めて東京地方裁判所へ提訴しました。

2.争点

本件訴訟で主に争点となったのは以下のようなポイントです。

本件で締結されたファクタリングの契約は実質的に貸金契約か

本件でA社とB社との間で締結されたファクタリングの契約が「債権譲渡契約」なのか、「実質的には貸金契約」となるのかが争われました。

債権譲渡契約であればB社の設定した手数料は有効であり、A社による不当利得返還請求は認められません。
一方貸金契約であればB社の設定した手数料は利息制限法違反となるので過払い金が発生し、A社による不当利得返還請求が認められます。

A社の主張、貸金契約であるとする根拠

A社は上記の争点について、以下のように主張しました。

2社間ファクタリングであった

本件ではB社からA社へ「債権回収に関する業務委託」が行われており、第三債務者からの債権回収は譲渡人であるA社自身が行う内容となっていました。
いわゆる2社間ファクタリングの事例です。

2社間ファクタリングの場合、ファクタリング会社は譲渡会社から回収したお金を受け取るだけで自ら債権回収する必要がありません。そこで債権譲渡契約特有の「不払いリスク」を受けにくいといえ、債権譲渡よりも貸金契約に近いという主張内容です。

またA社は「自ら2社間ファクタリングを望んだわけではなく、B社との契約の際に当然のように業務委託契約書にサインするよう求められた」などとも主張していました。

A社は債権の買い戻しを行わねばならない立場だった

本件においてA社の取引先が不払いを起こしB社が直接取引先へ取り立てを行うと、取引先に「A社がファクタリングを利用した事実」を知られてしまい信用が損なわれるおそれがあります。
そこでA社としては、不払いが生じたら「事実上買戻しをせざるをえない立場」といえる、と主張し、結果的にB社は不払いリスクを負っていないので債権譲渡とはいいにくく貸金契約とすべき、と述べました。

B社の反論、債権譲渡契約であるとする根拠

B社は以下のように述べて本件ファクタリング契約が「債権譲渡契約である」と主張、A社へ反論しました。

2社間ファクタリングも債権譲渡の一種として有効

そもそも2社間ファクタリングも債権譲渡契約の一種として有効と考えられています。
このことは、これまでに2社間ファクタリングを債権譲渡と認定した裁判例が多数出ていることからも明らかであるとして、B社は他の裁判例を複数証拠提出しました。

買戻特約はついていない

B社は本件で「買戻し特約」がついていないことも強調しています。このことは証拠提出されたファクタリング契約書や業務委託契約書の内容からも明らかです。
契約書には「売主(A社)は集金した金額の限りで指定された期日までに買主(当社)に引き渡せば足りる」と書かれているので、A社に「買戻しの義務」や「回収できない場合に全額を支払う義務」はありません。

完全ノンリコース型ファクタリング契約である

B社は本件ファクタリング契約が「完全ノンリコース型のファクタリング契約」であることも強調しています。

ノンリコースとは、取引先(第三債務者)の不払いにより債権回収できないとき、ファクタリング会社が譲渡会社に「別の資金による補填」を請求できない契約をいいます。
これまでの裁判例の蓄積により、ファクタリングが「債権譲渡」と認められるための要件として「ノンリコース」が非常に重要と考えられています。

本件ファクタリング契約には買戻し特約がついていないのはもちろんのこと、その他の方法によってもB社がA社へ債権回収不能となったときの補填を求めることはできない内容となっていました。
このように完全ノンリコース型を貫いているので、B社としては「本件ファクタリング契約が債権譲渡であり、貸金契約ではない」と反論しました。

3.裁判所の判断

裁判所は以下のように判断し、A社の請求を全面的に棄却しました。

A社は債権支払いについて保証していない

A社は本件で「支払いの保証を行ったので未回収の際には自己負担で補填しなければならない。支払いを強制される以上、貸金契約である」などと主張しましたが、裁判所は「A社は支払いの保証をしていない」と認定し、この主張を認めませんでした。

2社間ファクタリングであっても債権譲渡契約が成立する

A社は本件がいわゆる2社間ファクタリングことを理由に本件ファクタリング契約が貸金契約であると主張しましたが、裁判所はこれも否定。
「債権回収に関する業務委託契約が締結されているとしても、契約の性質が債権譲渡契約であることに影響しない」として、本件ファクタリング契約は債権譲渡契約と認定しました。

A社における買戻し義務は認定できない

A社は本件ファクタリング契約において「事実上の買戻し義務」があると主張しましたが、裁判所はこの主張も否定。
提出された契約書に買戻し義務は規定されていませんし、むしろ「債権が回収不能となったときにB社はA社へ売買代金の返還を求めることはできない」とはっきり書かれていることからも買戻し特約がついていないことは明らか、と認定しました。

その他のA社による主張もすべて排斥され、不当利得返還請求は全面的に認められず請求は棄却されました。

4.本件から学べること

本件は最近よくある「ファクタリングユーザー企業からの不当利得返還請求」の一つです。
この類型の訴訟においてユーザー企業は「ファクタリング契約は実質的に貸金契約」と主張しますが、本件のように「ノンリコース型」の場合、ユーザー企業側の主張はほぼ認められません。

しかし弁護士などに相談すると「ファクタリングを利用したら過払い金請求できる」とアドバイスされる現状があります。そこで事情をよく知らないまま訴訟に踏み切ってしまう中小事業者があとをたちません。

見切り発進で訴訟を起こすと費用と労力、時間を割かれて請求棄却され、損失しか残らないでしょう。不利益を避けるため、中小事業者としても正しい知識を持って対応する必要があります。
「ファクタリングは貸金契約」と説明されても「自社の場合、ノンリコースだったのでは?」と振り返って慎重に検討する姿勢が必要といえるでしょう。今後の参考にしてみてください。

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