金融裁判事例

債権の売買契約か貸金契約かが
争われた裁判例

ある企業が資金繰りに給してファクタリング会社へ債権譲渡すると、その企業へ債権を有している金融機関などが「債権譲渡は無効」と主張し裁判で、ファクタリングの法的性質が争われるケースは数多く起こっています。
「債権譲渡(債権の売買契約)」か「貸金契約(金銭消費貸借契約)」かが争点となる事例です。

今回ご紹介する裁判例でも、とある中小業者がファクタリングサービスを利用した後「ファクタリングは実質的に譲渡担保つき金銭消費貸借契約である」と主張し、支払った債権額の返還を求めました。

結論的には中小業者の請求が棄却され、契約の性質は「売買契約」と判断されました(東京地方裁判所 令和3年3月26日)。

さっそく具体的な事情や裁判所の判断内容をみていきましょう。

1.事案の概要と当事者

本件の当事者は、管工業を主目的とする中小業者(原告)と広告業を行う会社(被告)です。
被告は広告会社ですが、ファクタリングサービスも行っていました。

原告は2019年から2020年にかけて資金繰りのため、6回にわたって被告へ債権譲渡(取引先への売掛債権の売却)を行って譲渡代金を受け取りました。

譲渡された債権の額面額は391万円でしたが、ここから被告の手数料額が差し引かれたため原告へ実際に支払われた譲渡代金は311万5000円でした。

2社間ファクタリングだったため原告が自社で債権を回収し、被告へ303万800円を支払いました。

原告による返還請求

ところがその後、原告は「本件契約は実質的に譲渡担保つきの金銭消費貸借契約である」と主張。 金銭消費貸借であれば利息制限法が適用されますが、本件で設定された手数料は利息制限法を大幅に超過するものでした。 このような高額な利息(手数料)をとっているので契約は「無効」となると主張して、原告は被告へ支払った金額の返還を求めました。

被告は拒否

被告は「本件契約は売掛金の売買契約であり金銭消費貸借契約ではない、受け取ったお金を返還する必要はない」と拒否したため、裁判になりました。

2.裁判における原告の主張

訴訟において、原告となった中小業者は以下のように主張しました。

契約は無効、180万円の返還請求

本件で、原告は「2つの主張」を行いました。まずは「主位的主張(主とする主張)」の方からみていきましょう。

契約は無効

原告は本件のファクタリング契約は「外形的には債権の売買契約であるが、実質的に譲渡担保つきの金銭消費貸借契約」と主張しました。
根拠は以下の通りです。

  • 2社間ファクタリングであった

     本件ファクタリング契約は、他の多くのケースと同様「2社間ファクタリング」でした。つまり債権譲渡後も原告自身が債権管理を行い、原告が債権を回収して被告へ支払う「取立事務委任契約」を締結していました。

  • 被告が債権回収できなければ解除できると定められていた

     最終的に被告が債権回収できない場合、被告がファクタリング契約を解除できる可能性があることが定められていました。

  • 譲渡された債権が一部であった

     本件でファクタリングの対象にされたのは、原告が取引先に対して有していた債権の一部でした。

  • 取引先にファクタリングの利用を知られないためには、原告は買い戻しをせざるを得ない立場にあった

     2社間ファクタリングであっても、期日までに取引先から入金がなかった場合、被告が取引先へ直接請求します。しかし取引先へ直接請求されると原告は「ファクタリングを利用したこと」を取引先に知られて信用を失ってしまいます。リスクを防ぐには債権を買戻すしかありません。結局、原告は買い戻しをせざるをえない立場にあったと主張しました。

  • 原告に関する信用調査が行われた

     ファクタリング契約の際に「原告」の信用調査が行われました。これは金銭消費貸借の「融資の審査」と同様のものといえ、本件契約が金銭消費貸借であったことにつながります。

以上より、本件契約は実質的には譲渡担保つきの金銭消費貸借契約であるにもかかわらず、利息制限法を著しく超える高額な手数料が設定されているので無効と結論づけました。

一部請求

原告は被告へ支払った金額のうち、一部として180万円の返還を請求しました。おそらく印紙代を節約するためと考えられます。

予備的請求として過払い金請求

原告は予備的請求として「利息制限法を超過する部分については返還請求可能」と主張。契約が完全に無効にはならないとしても「過払い金」が発生するという内容です。利息制限法引き直し計算後の53万1764円を請求しました。

3.被告の反論

被告となった広告会社は以下のように反論しました。
「本件契約は売掛債権の売買契約であり、金銭消費貸借契約ではない」
「本件契約に買戻特約もついておらず、金銭消費貸借と評価すべき事情はない」
よって被告が原告から受け取った回収金を返還する必要はないと結論づけました。

4.裁判所の判断

裁判所はどのように判断したのでしょうか?

原告の主張内容からしても本件取引が金銭消費貸借とはいえない

原告は、さまざまな事情を主張して「本件契約は譲渡担保つきの金銭消費貸借契約」と主張しました。
しかし裁判所としては「原告の主張する事情は本件契約が売買契約であることと矛盾するものではなく、契約が金銭消費貸借契約とする根拠にならない」と判断。
確かに契約の性質上譲渡担保つきの金銭消費貸借と似た効果はあるけれど売買契約が金銭消費貸借になるものではない、としました。

買戻しの合意は存在しない

原告は本件ファクタリング契約に「実質的な買戻特約」がついていると主張しています。
取引先にファクタリングの利用を知られないため、不払いが生じたときには原告が事実上債権を買い戻さざるを得ない立場だったためです。
しかし裁判所としては「そのような状況は事実上の原告の都合にすぎず、原告と被告間に買戻しの合意があったとはいえない」と否定。
買戻し合意は存在せず、本件契約が金銭消費貸借契約といえる特段の事情はない、と判断されました。

利息制限法の適用はない

原告の主張は、本件ファクタリング契約に「利息制限法」が適用されることを前提としています。
ところが裁判所の認定によると本件ファクタリング契約は債権の「売買契約」であって金銭消費貸借契約ではなく、利息制限法の適用はありません。
契約が公序良俗違反で無効になることもなく、利息制限法を超過する金額を返還する必要もありません。

以上より原告の請求は全面的に棄却されました。

5.本件から学べること

本件で原告は、ファクタリング契約を「実質的に譲渡担保つきの金銭消費貸借契約」であるとして、無効として全額返還を求めたり過払い利息の返還を求めたりしました。理由として、単に「2社間ファクタリング」であった、「取引先の信用を維持するために買い戻しせざるを得なかった」「原告の信用調査が行われた」などの主張しか行われていません。

この「社長のきもち」ブログで何度もご紹介しているように、この程度の事情であればファクタリングが金銭消費貸借契約と認定されないのが通例です。
原告は、提訴前にもう少し昨今のファクタリング裁判事情について調査すべきだったといえるでしょう。

確かにファクタリング契約が譲渡担保つきの金銭消費貸借契約と判断される事例もあります。しかしそういった事例では、売買契約性が否定される特段の事情があるものです。単に2社間ファクタリングであるとか事実上買い戻さざるを得ない立場だったというだけでは過払い金請求は認められないと考えるのが無難と考えます。
今後の参考にしてみてください。

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