金融裁判事例

ファクタリング2社が訴えられて
勝訴した裁判例

資金繰りに窮すると、複数のファクタリング会社を利用する企業が数多く存在します。
今回ご紹介するのは、2社でファクタリングサービスを利用しながら後になって「ファクタリングは貸金業法違反、公序良俗違反で無効」と主張した企業の起こした裁判です。
同社はファクタリング会社へ交付したお金の全額返還と遅延損害金の支払いを請求しました。一方ファクタリング会社からも、回収済みの未払い債権の支払いを求める「反訴」が提起されました。

今回の判決も興味深い内容となっていますので、ぜひとも参考にしてみてください。

1.事案の概要

原告(反訴被告)…運送業を営むA社
被告(反訴原告)2社…ファクタリング業を営むB社とC社

A社の請求

原告であるA社は資金繰りのため、B社とC社にてファクタリングサービスを利用しました。
その際、B社でもC社でも第三債務者に対する通知は行われませんでした。いわゆる「2社間ファクタリング」です。

またA社は自社で債権回収し、B社に対しては132万円、C社に対しては125万円を支払いました。

ところがA社はその後「ファクタリング契約は実質的に金銭消費貸借契約」であり「ファクタリング契約は暴利で公序良俗違反、貸金業法42条1項に違反して無効」と主張し始めたのです。
そしてA社は回収済みの債権125万円をB社に支払わず、同じく回収済みの債権125万円をC社に支払いませんでした。またB社に対しては支払い済みの132万円の返還を、C社に対しては支払い済みの125万円の返還を求めました。
さらにA社はB社に対し、「これまでの取引履歴の開示」を要求。B社がこれを拒否したところ、「取引履歴不開示は貸金業法違反で不法行為となる」と主張し、「慰謝料10万円」も請求しました。

B社とC社による反訴

B社はA社に対し、回収済みの125万円の引き渡しを請求、C社も同様にA社に対し、回収済みの125万円の引き渡しを請求しました。

請求関係のまとめ

本訴

  • A社→B社へ132万円の請求(すでに支払った回収債権の返還請求)
  • A社→C社へ125万円の請求(すでに支払った回収債権の返還請求)

反訴

  • B社→A社へ125万円の請求(未払いの回収済み債権の請求)
  • C社→A社へ125万円の請求(未払いの回収済み債権の請求)

2.争点

本件の争点は、A社とB社、C社との間のファクタリング契約が公序良俗違反や貸金業法違反になるかです。

A社の主張

A社は「本件ファクタリング契約は実質的に金銭消費貸借であるにもかかわらずB社、C社は貸金業登録していない。また貸金業法や出資法に違反する高額な手数料(利息)が課されているので公序良俗違反、貸金業法違反である」と主張しました。
本件ファクタリング契約は債権譲渡契約ではなく「譲渡担保つきの金銭消費貸借契約である」と主張されたのです。
C社との取引においては「A社自身の信用リスク」が重視されていた点も強調されました。

※債権譲渡契約では第三債務者の信用が重要で、金銭消費貸借契約であれば借入人である申込者(本件ではA社)の信用が重視されます。本件ではA社の信用リスクが重視されたので貸金契約という主張です。

B社、C社の反論、反訴の理由

B社とC社は以下のように「本件ファクタリング契約は債権譲渡契約であり金銭消費貸借ではないので貸金業法は適用されない」と反論しました。

  • 本件ファクタリング契約は形式的にも実質的にも債権譲渡契約である
  • 第三債務者の信用調査を行った上でファクタリングを実行している
  • 第三債務者へ通知はしていないが対抗要件具備の準備は行っていた
  • そもそも第三債務者へ通知をしないでほしいというのはA社自身の希望であった
  • 第三債務者の無資力リスクはB社やC社が負っており、A社は危険を負担していなかった

金銭消費貸借契約ではない以上、既払い金の返還義務はありません。むしろA社は契約とおり、未払いの回収金をB社やC社へ支払うべきであり、B社が取引履歴を開示しなかったことも違法ではないと反論しました。

3.裁判所の判断

裁判所は以下のように述べてA社の主張を完全に排斥、B社とC社の主張を認容しました。

本件取引は公序良俗違反にならない

まず本件取引は「債権譲渡契約」であり金銭消費貸借契約ではないと判断。結果として手数料は暴利とはいえず公序良俗違反にならないと判断されました。

債権譲渡契約と認定された理由は以下の通りです。

  • 本件ファクタリング契約は「債権譲渡契約」の形式をとっている
  • 債権譲渡は「担保目的ではない」ことが明記されている
  • 債権の買い戻しは予定されておらず、B社やC社が第三債務者の無資力リスクを負っている
  • 対抗要件具備が猶予されてはいたが、B社やC社はいつでも撤回して第三債務者へ通知できるよう準備されていた
  • 対抗要件具備が猶予されるいわゆる2社間ファクタリングのケースであっても「譲渡担保目的の金銭消費貸借契約」になるとは限らない(債権譲渡契約は有効に成立する)
  • A社とC社の取引において、A社の信用リスクが重視された証拠はない

貸金業法違反にならない

A社は本件ファクタリング契約が貸金契約である以上貸金業法が適用され、利息が高額すぎるために貸金業法42条違反となって無効になると主張していました。

しかし裁判所は「本件ファクタリング契約は債権譲渡契約であって貸金契約ではないので貸金業法の適用はなく、貸金業法42条違反にならない」と判断しました。

慰謝料も発生しない

A社はB社が取引履歴を開示しなかったことについて「取引履歴開示義務を定める貸金業法に違反する」として慰謝料10万円を請求しました。
しかし裁判所は「そもそも本件に貸金業法は適用されないのでB社に取引履歴開示義務はなく、慰謝料も発生しない」としてこの主張も排斥しました。

結論としてA社の主張は全面的に排斥されB社とC社の反訴請求が認められたため、A社に対して未払いの回収債務の支払い命令が下されました。

5.本件から学べること

本件でA社は「本件ファクタリング契約は譲渡担保つきの金銭消費貸借契約」と主張しましたが、全面的に排斥されています。

  • 契約書の文言(譲渡担保目的ではないことが明記されていた)
  • ファクタリング会社が不払いリスクを負っていたこと
  • 買い戻し特約がついていなかったこと(ノンリコースであったこと)
  • 2社間ファクタリングであっても対抗要件具備(第三債務者への通知書発送)の準備を行っていたこと

こういった事情が評価されました。
A社はB社へ取引履歴を請求し、B社が拒否したことから慰謝料も請求されましたが、貸金業法の適用がないことからこちらも排斥されました。

ファクタリング会社の方へ

ファクタリング業務を行うときには、基本契約書の文言に注意を払うべきと考えられます。今回のA社のように「譲渡担保つきの金銭消費貸借契約」などと主張されないため「債権譲渡は譲渡担保目的でない」と明記しておくべきでしょう。
また2社間ファクタリングであっても、いつでも第三債務者へ通知できるように必要な枚数分の通知書を用意しておくべきと考えられます。
第三債務者への信用調査はしっかり行い、その経緯を記しておくとよいでしょう。

資金調達される企業の方へ

2社間ファクタリングであっても必ずしも金銭消費貸借契約になるとは限りません。
ノンリコースの場合、本件のように「債権譲渡契約」と認定されるケースが大多数です。
弁護士であっても間違ったアドバイスをされる事例が散見されますので、「ファクタリング会社からお金を取り戻せる」と信じ込むのは危険と考えています。

今回の裁判例のご紹介を、今後のみなさまの業務にお役立てください。

まずは無料相談をお試しください。

お申し込み・お問い合わせはこちら