• プライバシーマーク
  • お問い合わせフリーダイヤル
  • お問い合わせフォーム

金融裁判事例

破産管財人によるファクタリング会社への
不当利得返還請求が棄却された事例

ファクタリングを利用して資金調達を行っても、その後経営不振が続いてやむなく倒産してしまう事業者が少なくありません。

そんなとき、破産管財人がファクタリング契約を「貸金契約(金銭消費貸借契約)」と主張、「利息制限法違反」であるとして「過払い金返還請求」をするケースが多々あります。

本件は、破産管財人によるファクタリング会社に対する過払い金請求(不当利得返還請求)が認められなかった裁判例です(東京地裁平成31年4月12日)。

1.事案の概要

本件の原告は、破産会社(2社)の破産管財人です。
破産会社はかつてファクタリング会社を利用、債権譲渡契約を締結して資金調達を行いました。
その際、「取引先の信用を失いたくない」という破産会社自身の意向により、債務者(破産会社の取引先)には債権譲渡通知をしない「2社間ファクタリング」が利用されました。つまり債権回収事務はファクタリング会社が行うのではなく破産会社に委託され、破産会社が後日に回収した債務をファクタリング会社へ引き渡す内容となっていたのです。
また同時にファクタリング会社が確実に債権回収を行うための「譲渡担保権」も設定されました。さらに強制執行認諾条項付きの公正証書が作成され、破産会社の代表者などが連帯保証人となったという事情もありました。

ところがその後、破産会社の経営環境が悪化して破産申立を行いました。就任した破産管財人は、以下のような主張をしてファクタリング会社へ過払い金請求をしたのです。

「本件は債権譲渡契約ではなく実質的に金銭消費貸借契約である」
主な理由は以下のとおりです。

  • 債務者へ債権譲渡通知が行われず破産会社が債権回収を行うことになっていた(いわゆる2社間ファクタリングであった)
  • 債務者の資本金が多額で信用性が高かったので、ファクタリング会社は回収不能リスクをほとんど負っていない
  • 債権回収の確実性を期するため、譲渡担保権が設定され公正証書が作成されていた
  • 債権の全部ではなく一部だけが譲渡されたので、ファクタリング会社における回収不能リスクは低かった

わかりやすくいうと「ファクタリング会社は回収不能リスクをほとんど負っていないので、債権譲渡契約とはいえない」というのが主な主張でした。

そのうえで「金銭消費貸借契約であれば、利息制限法が適用されるので高額すぎる手数料に関して過払い金が発生する」として、合計約2,600万円以上もの請求したのです。

請求を受けたファクタリング会社は「本件は債権譲渡契約であり、過払い金は発生しない」と反論したため、裁判に持ち込まれ争いとなりました。

2.裁判所の判断

裁判所は以下のように判断し、破産管財人による請求を棄却しました。

本件のファクタリング契約は債権譲渡契約である

裁判所は、本件で締結されたファクタリング契約の法的性質について「債権譲渡契約」と認定しました。理由は以下のとおりです。

回収不能リスクはファクタリング会社が負っている

本件では債務者から債権回収できなかったときに破産会社が支払をしなければならないなどの特約(いわゆる「買い戻し特約」)はついておらず、最終的な回収不能リスクはファクタリング会社が負担する内容となっていました。

2社間ファクタリングを希望したのは破産会社の事情

本件では、債務者へ債権譲渡通知をせず債権譲渡の登記もしない、いわゆる「2社間ファクタリング」が利用されましたが、これは破産会社側が「取引先に対する信用を失いたくない」と希望した事情があったためです。
このことから、2社間ファクタリングだからといって金銭消費貸借ということはできない、との認定に傾きました。

債権の一部の譲渡であっても債権譲渡契約といえる

本件では、債権の全部ではなく一部の譲渡が行われたので、ファクタリング会社に生じるリスクが小さくなることも問題とされました。
しかし裁判所は、債権の一部譲渡としたのはファクタリング会社が回収不能リスクを軽減するための措置であり、債権譲渡契約の本質に反するものではないと判断。このことをもって破産管財人の主張するように「金銭消費貸借契約であった」とはいえないと認定しました。

その他の事情について

本件では、強制執行認諾条項付きの公正証書が作成されたり、譲渡担保権が設定されたりしていました。
ただ、これらの事情があるからといって、契約が金銭消費貸借契約になるわけではありません。裁判所も、こういった事情があったことは認めながら本件契約は金銭消費貸借とはいえない、と認定しました。

過払い金(不当利得)は発生しない

本件のファクタリング契約は債権譲渡契約である以上、利息制限法の適用はありません。
破産管財人の主張する過払い金は発生しないと判断されました。

以上より破産管財人による過払い金請求(不当利得返還請求)は棄却されるに至りました。

3.本件からいえること

本件のように、ファクタリングで資金調達した会社が後に破産し、破産管財人が過払い金請求を行うケースは多々あります。多くのケースで「2社間ファクタリング」が利用され、破産管財人が「実質的に金銭消費貸借契約」であるとして過払い金を請求するパターンです。

2社間ファクタリングでも債権譲渡契約と認定される

ファクタリング契約が「実質的に金銭消費貸借契約」と認定される事例は少数です。
単に2社間ファクタリング契約だからといって債権譲渡性が否定されるわけではありません。
それ以上に「買い戻し特約」などが設定されていて「ファクタリング会社が回収リスクを負わない」状況になっていることまで要求されるのが通常です。
本件でも、2社間ファクタリングであったことを理由に金銭消費貸借と認定されることはありませんでした。

債権譲渡性を否定するには至らない周辺事情

本件では債権の全部ではなく一部が譲渡されたことについても原告から指摘がありましたが、それによっても債権譲渡の性質は否定されませんでした。
また強制執行認諾条項付き公正証書が作成され、債権譲渡担保契約まで設定されていましたが、それでも債権譲渡契約であると認定されました。

このように、管財人によって契約を締結した際のさまざまな周辺事項が指摘されても、債権譲渡の性質そのものまで否定される可能性は低いといえます。

今後、ファクタリング契約を締結するときの参考にしてみてください。

4.まとめ

確かにファクタリング契約が「実質的に金銭消費貸借契約」と認定されるケースは存在しますが、多くはありません。買い戻し特約がついていてファクタリング会社が一切回収リスクを負っていない等の特殊事情が必要となるでしょう。
一方で、ユーザー企業に100%の回収リスクを負わせてくるような悪質なファクタリング会社が相手であれば、支払ったお金を取り戻せる可能性があります。
今後ファクタリングを利用する、あるいは既にファクタリングを利用した事業者様は、ぜひ参考にしてみてください。

まずは無料相談をお試しください。

お申し込み・お問い合わせはこちら