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金融裁判事例

ファクタリング2社への請求が
棄却された裁判例

今回は2社でファクタリングを利用した会社が、後に「債権の売買契約ではなく実質的には金銭消費貸借契約であった」と主張してファクタリング2社に対し、不当利得返還請求を起こした裁判例をご紹介します。
ファクタリング会社の「利息制限法を超過する手数料」を「過払い金」として返還請求したものです。

結論としてユーザー起業側の主張は認められず、原告の請求が棄却されました。
事案の概要や争点、棄却された理由などをみていきましょう。

東京地方裁判所令和2年(ワ)第32419号 令和3年9月1日判決

1.訴訟前の経緯と事案の概要

原告は東京都で土木建築用資材や建設機械リース、建具工事業などを営むX社です。
被告2社はファクタリング会社で1社をA社、もう一つをB社と表記します。

X社はA社とB社との間でファクタリング契約を締結し資金調達しました。
A社とは6回取引を行い、B社とは7回に渡って取引を行いました。
いずれの契約でも契約書には「債権の売買契約」と明記され買戻特約はついておらず、債権回収はX社に委託されました(取立事務委任契約)。
これはA社やB社が直接X社の取引先に請求すると、取引先にファクタリングを利用した事実を知られてX社の信用が毀損されるリスクが懸念されたためです。いわゆる2社間ファクタリングの事例です。

X社は約定にもとづいてA社とB社へ回収債権を支払いましたが、後になって「本件のファクタリング契約は実質的に金銭消費貸借契約であった」と主張しました。
利息制限法を適用して計算すると、A社に対しては179万6207円、B社に対しては168万1252円の過払い金が発生しているとして返還請求を行いました。

A社もB社も「ファクタリング契約は債権譲渡契約であり利息制限法の適用はない」と主張して支払いを拒否したため、X社はA社とB社を相手取って不当利得返還請求損害賠償請求訴訟を提起して裁判所へ判断を求めました。

2.原告X社の主張

被告A社に対し

X社は以下のような理由により「本件ファクタリング契約は金銭消費貸借契約である」と主張しました。

A社は譲渡債権の回収リスクを負担していない

ファクタリング契約が債権譲渡契約か金銭消費貸借契約かは、通常「当事者のどちらが回収リスクを負っているか」で判断されます。X社は「回収不能リスクは自社が負担しておりA社は負担していないから金銭消費貸借契約」と主張しました。

X社は債権譲渡通知が第三債務者へ発送されるのを阻止するため譲渡債権を買い戻さざるを得ない立場であった

本件ではA社から第三債務者への債権譲渡通知は送られませんでしたが、X社はA社へ債権譲渡通知を預けていました。第三債務者が不払いを起こしたときにはA社が債権譲渡通知を送れる用意をしていたのです。ところが実際に債権譲渡通知が第三債務者へ送られるとX社の信用が毀損されるので、X社としては事実上通知を阻止するために買い戻すしかありません。このように「事実上の買戻特約がついていたのと同じ」だから本件は金銭消費貸借契約であると主張しました。

A社との契約で「表明保証違反があれば解除される」と書かれており、これによると回収できなかった場合のリスクはX社が負っていた

本件ファクタリング契約書では、X社が告知内容に虚偽がないことなどについて表明保証していました。保証内容に虚偽があった場合にはA社から解除ができる内容です。
このように「表明保証違反で解除されるのだから、回収できなかった場合にも解除される可能性があり不払いリスクはX社が負っていた」と主張しました

被告B社に対し

被告B社に対する主張内容は以下の通りです。

B社は譲渡債権の回収リスクを負担していない

X社は債権譲渡通知が第三債務者へ発送されるのを阻止するため、不払いが生じた場合には事実上買い戻しをせざるを得ない立場にあった

第三債務者が抗弁を主張したときにはX社へ額面額の支払い請求をできる約束になっていた(表明保証違反があった場合に解除できる)

A社に対する請求理由とほとんど同じ内容です。

3.被告A社の反論

A社は回収リスクを負っている

第三債務者が不払いを起こしたとき、A社としては回収した債権から満足を受けるしかなくX社の財産全体が債務の引当になっていたわけではない、つまり回収リスクはA社が負っていたと反論しました。

X社は買い戻しをせざるを得ない立場ではない

X社としては第三債務者から回収した限りで支払いをすれば責任を免除される立場であり、債権買い戻しをせざるをえない立場であったとはいえないと反論しました。

表明保証違反があった場合に解除できるのは当然

A社に対し虚偽を述べたなどの表明保証違反があった場合にA社側が解除できるのは当然であり、これをもって契約が金銭消費貸借とはいえないと反論しました。

4.被告B社の反論

B社の反論もほぼA社と同様で、以下の通りです。

B社が回収リスクを負っていた

X社は買い戻さざるを得ない立場ではなかった

第三債務者の資力状況など、表明保証違反があった場合に解除できるのは当然でありそれをもって金銭消費貸借契約とはいえない

5.裁判所の判断

A社への請求に対し

A社とX社との契約は債権譲渡契約であり金銭消費貸借契約ではないと判断しました。
理由は以下の通りです。

  • そもそも契約書において「債権の売買」であることが明記されていた
  • 第三債務者が不払いを起こした場合の危険は「A社が負う」とされていた
  • A社はX社へ第三債務者からの取立事務を委任していたが、第三債務者の債務不履行や倒産などによって回収不能となったときには「X社は何の危険も負わない」ことが明記されていた
  • 不払いがあったとしても、A社はX社の財産一般から取り立てができるわけではなく、あくまで引当となるのは「回収できた金銭」だけであった
  • 表明保証の内容に「譲渡債権に抗弁事由や消滅自由が存在しない」ことが含まれていても不当とはいえないし、表明保証違反があれば解除できるのは当然
  • X社が事実上買い戻さざるを得ない立場にあったとはいえない

B社への請求に対し

B社への請求については、以下のような理由により契約の性質は「債権譲渡契約」であり「金銭消費貸借契約ではない」と判断しました。

  • 契約書において売買対象となる債権額と代金額、「譲渡担保つきの金銭消費貸借契約ではない」と明記されていた
  • X社がB社に対し「第三債務者の資力」や「債権の完全な履行」を保証するものではなく、仮に第三債務者が債権の一部を払わず回収不能となってもB社がX社へ売買代金の返還請求ができないと明記されていた
  • B社はあくまで「第三債務者から回収した債権」を引き当てにしており、X社の財産一般を引き当てにしていたわけではない
  • 表明保証の内容に「譲渡債権に抗弁事由や消滅自由が存在しない」ことが含まれていても不当とはいえないし、表明保証違反があれば解除できるのは当然
  • X社が事実上買い戻さざるを得ない立場にあったとはいえない

以上のようにA社B社ともに契約の性質は債権譲渡契約であるから利息制限法の適用はなく、手数料は有効で過払いは発生しないので、原告の請求に理由はないとして全面的に請求が棄却されました。

6.裁判例から学べること

本件ではX社が「表明保証違反にもとづく解除」「事実上の買い戻し義務」などを理由に契約が金銭消費貸借であると主張していますが、こういった理由では裁判所は金銭消費貸借契約とは認めないのが一般的です。
表明保証の内容がよほど不当であったり別条項で買い戻しを強制するような内容でも入っていたりしない限り、過払い金請求は難しくなるでしょう。

弁護士の中にも「事実上の買い戻し義務」や「表明保証違反による解除」のみで契約が金銭消費貸借になると考えており、そういったアドバイスを行う方がおられるようです。
ファクタリングを利用した後に法律相談を受けるときには、今回ご紹介した裁判例の内容も思い出しながらアドバイスを聞くと良いでしょう。

まずは無料相談をお試しください。

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