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金融裁判事例

ファクタリングで架空債権が譲渡され賠償金支払い命令が出た裁判例

ファクタリングを利用するときに、譲渡された債権が「架空債権」だったらどうなるのでしょうか?

実は債務者(ユーザー企業)が架空の債権をねつ造してファクタリング会社に提示し、資金調達を受けたケースが現実に存在します。このような場合、債権の実態がないのでファクタリング会社は債権回収できず、損害を被ってしまいます。

今回はファクタリングのユーザー企業が「ねつ造債権」をファクタリング会社に譲渡して資金を詐取しようとした事案をご紹介します。

当事者の主張内容や裁判所の判断内容を確認していきましょう。

1.事案の概要

本件で原告となったのはファクタリング会社であるA社、被告となったのは架空債権を譲渡したB社とB社の代表取締役であるCです。B社は土木工事を目的とする会社です。

B社の代表取締役であるCと取締役のDは、東日本大震災の復興工事に関する架空債権をねつ造し、A社へファクタリングを申し込みました。

その結果、B社はA社へ合計額面1億3977万1800円の債権(すべて架空)を譲渡し、手数料を割り引いて1億2579万4620円を受け取りました。

ところが本件で譲渡されたのはすべて「架空の債権」だったので、A社は当然譲渡債権を回収できません。B社が期日になっても支払いをしなかったためA社が第三債務者に請求したところ「債権が存在しない(架空)」ことが発覚しました。

A社は「架空債権の譲渡によってだまされた」と主張し、B社と代表者であるC個人に対し、損害賠償請求を行いました。

請求原因は「不法行為にもとづく損害賠償請求、使用者責任」と「会社代表者の任務懈怠による第三者への賠償責任(会社法350条)」です。

2.争点

本件で争点となったのは「CやDによる架空債権譲渡が詐欺に該当するか」です。
詐欺に該当するならCやDには不法行為責任が発生し、B社にも使用者責任が発生します。Cには会社法上の代表者責任も発生するでしょう。

A社は「BとCは実際には存在しないことを知りながらA社に架空債権を譲渡し、1億2千万円ものお金を詐取したのだから明らかに詐欺が成立する」と主張しました。

これに対し、B社側は以下のように反論しました。

本件ファクタリング契約は実質的に金銭消費貸借であり、債権に実体があるかどうかは問題にならない

まず「本件ファクタリング契約はA社がB社へ融資を行い、その後B社が手数料分を上乗せしてA社へ返還するものであり、実質的に金銭消費貸借契約である。よって『債権に実体があるかどうか』は問題にならず、架空債権であったとしても詐欺にならない」と主張しました。

本件ファクタリング契約が実質的に貸金契約とする理由は以下のとおり示されました。

  • 第三債務者の無視力の危険をB社が負担している(A社は相殺による回収も可能であった)
  • A社は対抗要件を備えていない
  • 第三債務者への信用調査が行われていない
  • 複数の債権が譲渡されているにもかかわらず利率や支払い予定日が一律である
  • 信用調査を行った会社が架空債権の譲渡を主導した
  • A社は金融のプロであり、だまされるのは不自然で調査がずさんだったことの顕れである

過失相殺

また被告らが損害賠償責任を負うとしても、A社は貸金業法や出資法の脱法行為としてファクタリング融資を行っているので「過失相殺されるべきである」とも主張しました。

A社の再反論

A社側は上記に対し、以下のように再反論を行いました。

  • A社が相殺できるのはB社が受領したお金をA社に支払わない場合に限定されており、B社へ回収不能リスクを負わせるものではない
  • A社は工事の場所や現況確認を実施しており「債権に関する調査」を行っている
  • 利率や支払日が一定でも金銭消費貸借契約になるわけではない
  • 調査会社が債権の調査を行ったのは事実であるが、だからといってファクタリング契約が金銭消費貸借契約になるものではない
  • 調査会社が架空債権のねつ造を指示したり主導したりした事実もない

3.裁判所の判断

裁判所は以下のように判断し、B社とCの責任を全面的に認めました。

Cは詐欺行為を行っておりB社とCには不法行為責任が成立する

本件で、B社の代表取締役Cと取締役Dは以下のような行為をしました。

  • 個別契約に先立って工事請負代金の請求書を作成
  • 工事現場の写真を撮影してA社へ提示
  • B社の代表者であるCは架空債権であることを知ったが、Dから「別会社から借り入れて決済すれば良い」といわれて了承した

以上のような行動をみると、CやDは詐欺行為を行ったといえ不法行為が成立することは明らかと判断されました。

実質的に金銭消費貸借とはいえない

B社は「本件ファクタリング契約は実質的に貸金契約なので債権に実体があるかどうかは問題にならない」と主張しました。

しかし債権に実体がないとわかっていればA社はB社へファクタリングによる融資を決済しなかったはずです。その意味で「債権に実体があるかどうか」は本件契約において極めて重要なポイントといえます。B社の取締役であるDも本件債権が架空であることをA社に知られないように隠しており、このことからしても「本当のことが知れるとファクタリング融資を受けられない」と認識していたことが明らかです。

よって「債権に実体があるかどうか」は本件ファクタリング契約締結に際してキーポイントとなる事項であり、B社の主張は失当と判断されました。

また「B社が第三債務者無資力の負担を負っていた」という主張も排斥。対抗要件を備えていなかったという主張についても「それによって金銭消費貸借契約になるものではない」と判断されました。B社が一定の調査を行った事情も評価され、最終的に「本件ファクタリング契約は金銭消費貸借にならない」と判断されました。

過失相殺は行わない

本件においてB社は間に入った「調査会社」がA社の履行補助者的立場から架空債権の譲渡を主導したため過失相殺すべき、と主張しましたが、裁判所はこの主張を認めませんでした。
むしろ主体的にA社をだましたのはB社のCやDであり、A社側に過失相殺すべき不注意はみあたらないと判断。「過失相殺は認められない」としてB社とCに全額の支払い命令を下しました。

4.本件のポイント

本件は、ユーザー企業側がファクタリング会社をだました事案です。
実際、B社のように自ら架空債権を譲渡しておきながら不法行為責任を追求されると「ファクタリングは実質的に金銭消費貸借契約なので、債権が架空かどうかは問題にならない」などと開き直る企業が存在するのです。ファクタリング会社はこういった被害に遭うリスクにも充分注意すべきといえるでしょう。
自社へ直接申込みを受けた場合だけではなく、紹介案件でも慎重に調査を行う必要があります。今回の事例でも、紹介や調査を任せていた企業が詐欺に関与していたようです。

ファクタリング実行時にきちんと調査を行って後に「金銭消費貸借契約である」などといわれないように対応しておけば、今回のように詐欺による不法行為が認められ、過失相殺も適用されずに済むでしょう。

なお本件では1億円以上が詐取されていますが、この金額であれば刑事事件にもなるのではないかと思われます。相手が開き直る場合、刑事告訴も検討してよいかもしれません。
ファクタリングを行う事業者の方はぜひ参考にしてみてください。

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