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金融裁判事例

金融裁判レポート

中小企業経営者は要注意!ファクタリング裁判の勧誘を受けたら慎重な対応を

私は仕事柄、中小企業経営者の方から資金調達についてのご相談を受ける機会が人よりも多いと思います。ファクタリングに関してはさまざまな法的見解もありますし、仕事にも関係しますので常々から大きな関心を抱いてきました。

最近、非常に気になっているのがファクタリングを利用した会社がファクタリング会社に対して起こす裁判です。ファクタリング会社の行為が不適切であれば仕方がないと思うのですが、そうではない場合も少なくありません。半ば「やみくも」に訴訟提起されているように感じることがあります。

先日裁判所へ行ってどんな事件があるのかみてみたところ、とある中小企業(A社とします)がファクタリング会社(B社とします)に対し、不当利得返還請求訴訟を起こしているのを発見しました。

A社はB社とのファクタリングが「実質的には金銭消費貸借契約」であると主張し、債権譲渡契約であることを否定。利息制限法を適用して過払い金の返還を求めているようでした。

どういった事例なのか、ポイントをかいつまんでわかりやすくご紹介いたします。中小企業経営者のみなさまにはぜひ、ファクタリングを巡る裁判について少し考えてみてもらえたらと思います。

 

1.事案の概要

A社はかつて、資金繰りに悩んでB社のファクタリングサービスを利用しました。

ところがその後、そのファクタリング契約が「実質的に金銭消費貸借契約である」と主張し、利息制限法を超過する手数料の返還を求めました。A社によるB社への請求額はおよそ2,000万円。根拠は以下のようなことです。

 

A社の主張

  • A社とB社の取引は継続的であり、A社が資金繰りに窮するとファクタリングを利用して金銭を受け取り、売掛金を自ら回収してB社へ支払をする、というものであった。これではまるで、「お金を借りて返済している」のと同じ状況である
  • 本件では債権譲渡契約といってもA社がB社から債権回収の委託を受けており、A社自身が債権回収して支払をしている。これでは債権譲渡というより金銭消費貸借契約に近い
  • A社が回収したお金をB社へ支払えない場合にはB社は自ら取引先へ債権譲渡通知を送って債権回収する契約になっているが、A社としては取引先に通知を送られると信用を失ってしまう。このような債権譲渡通知はA社への不当な「脅迫」である
  • 手数料が高額で膨大になっており、明らかに利息制限法の上限利率を超過する

つまりA社は、本件ファクタリング契約ではA社がB社からお金を受け取り、A社自身が債権回収してB社へ継続的に支払をしているのだから、「外形的には金銭消費貸借契約と変わらない、だから利息制限法が適用されるのだ」と主張。ファクタリングの手数料を利息制限法にあてはめると制限を大きく超過するので、過払い金として約2,000万円の返還を求めていました。

 

B社の反論

これに対し、B社からは以下のような反論書面が提出されていました。

  • 本件ではいわゆる「2者間ファクタリング」が利用されており、債権回収業務はA社に委託されている。これは「取引先の信用を失いたくない」というA社の希望によるものである
  • 2者間ファクタリングも債権譲渡契約として有効である
  • 最終的な取引先(第三債務者)による不払いリスクはB社が負っているので、本件契約は金銭消費貸借契約ではない
  • A社は単に取引先から回収したお金をB社へ支払えば良いだけであり、不払いとなった場合に肩代わりしなければならない責任はないので、本件は金銭消費貸借契約とまったく異なる
  • B社が債権譲渡通知を留保しているのは、「取引先の信用を失いたくない」というA社自身の要望によるところであり、脅迫ではありえない

 

上記のような理由により、A社とB社のファクタリング契約は債権譲渡契約なので利息制限法の適用はないと結論づけていました。

つまりB社としては「債権回収をA社が行うとしても、回収できなかったときのリスクはB社が負うのだから金銭消費貸借契約とはまったく異なる(金銭消費貸借契約なら、回収できなかったからといってB社への支払が免除されることはありえない)」「債権譲渡通知を送らずA社に債権回収を任せているのはA者自身の要望によるところであり、脅迫ではありえない」として、A社の主張の排斥を求めています。

私が見た書面は上記のA社の訴状とB社の1枚目の準備書面だけでした。この裁判はまだ続いており、結論は出ていないようです。

 

2.大森の感想

本件に関する私大森の感想を述べたいと思います。

ファクタリングが利用されるとき、本件のようにファクタリング利用会社へ債権回収事務が委託されるケースが大多数です。ファクタリング利用会社自身が信用を失いたくないことから、事務委託を希望するためです。

とはいえ債権回収が不可能となったときにはファクタリング会社自身が債権回収せざるをえません。その際にファクタリング会社が債権譲渡通知を送るのは当然のことといえるでしょう。

それにもかかわらず「債権回収できなかった場合に債権譲渡通知を送ることはA社への脅迫である」というA社側の主張はいかにもおかしいと思いました。

また、本件のようにファクタリング利用会社が最終的な不払いリスクを負っていない場合、ファクタリング利用会社は回収不能だった場合にファクタリング会社へ支払いをする義務を負いません。金銭消費貸借契約であれば、そういった言い訳は通用しないはずです。

たとえば銀行ローンを利用したとき、「売掛金を回収できませんでした、だから今月の支払はできません」といっても銀行に聞き入れてもらえませんよね?そんなことは当たり前の話です。

こういったことからも、本件のファクタリング契約は金銭消費貸借契約とはいえないのでは?というのが正直な感想です。それにもかかわらず金銭消費貸借契約であることを前提に過払い金請求をするA社の主張には無理があるように感じました。

 

3.中小企業のみなさまに注意してほしいこと

最近、A社のように弁護士から「ファクタリング契約を利用したなら過払い金請求できる」といわれて信じ込み、安易にファクタリング会社へ過払い金請求(不当利得返還請求)訴訟を提起してしまう中小企業が増えているように感じます。

そういった事例の多くは中小企業側が敗訴しており、結局は「弁護士先生のもとにお金が入っただけ」「弁護士の顧問会社が増えただけ」といった結果になることも少なくありません。

確かにファクタリング会社のやり方が明らかに不当であれば、弁護士に依頼して不当利得返還請求訴訟を起こし、お金を取り戻すべきです。

しかしそうではないまっとうなファクタリングのケースにおいてまで訴訟を起こしても、時間と労力、費用の無駄になってしまいます。

みなさまにおかれましては、ファクタリング会社への訴訟を弁護士から勧誘されたとき「本当に訴訟を起こす価値があるのか」慎重に検討していただければと思います。

これからも同様の訴訟案件がありましたらご紹介したいと思いますので、関心ある方はぜひお読みください。

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