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金融裁判事例

事案の見解

ファクタリング契約が「貸金契約ではない」と判断され、 「公序良俗違反、譲渡禁止特約違反」の主張も認められなかったケース

ファクタリング契約を利用した会社が後になって「利息制限法違反」「公序良俗違反」などのさまざまな主張を行い、ファクタリング会社に対してお金の返還を求めるケースが少なくありません。

裁判例では、そういった中小事業者の主張が認められなかったものが多数あります。

今回は、裁判所が「ファクタリング契約は貸金契約ではない」とした上で「公序良俗にも反しないし、譲渡禁止特約違反で無効にもならない」と判断した裁判例をご紹介します(平成29年5月23日 東京高等裁判所)。なお原告による上告も棄却されています。

1.事案の概要

本件の原告は、貨物運送業者です。原告は資金繰りのため、ファクタリング会社R社と債権譲渡契約を締結し、ファクタリングを利用して資金調達を行いました。譲渡対象となったのは、原告の大手運送会社などに対する債権です。

本件のファクタリング契約では「R社が回収不能の危険を負担する」とされていました。また「2社間ファクタリング」を利用したため、債務者へは通知が行われず債権譲渡登記も行われませんでした。

そして契約にもとづいて原告が自ら債権を回収し、R社へ回収したお金を支払いました。
しかしその後原告はR社に対し、以下の主張を行って支払った債権の返還を求めたため、トラブルが発生して裁判になったのです。

1-1.貸金契約なので、過払い金返還を求める

原告は、本件ファクタリング契約を「実質的には貸金契約」であると主張しました。
そうすると「利息制限法」が適用されることになります。R社が適用したファクタリングの手数料は利息制限法の制限利率を超えるもので高額すぎるとして、過払い金の返還を求めました。

1-2.公序良俗に反して無効

次に原告は、仮に貸金契約ではなく債権譲渡契約であるとしても、手数料が高額すぎるので「暴利行為」にあたると主張。公序良俗違反の契約は無効になるので、支払ったお金の返還を求めました。

1-3.譲渡禁止特約があるので無効

さらに原告は、本件で第三債務者らとの間で「譲渡禁止特約」がついていたことにも着目します。譲渡禁止特約がついているにもかかわらずファクタリングによって債権譲渡を行ったので、ファクタリング契約は無効と主張したのです。

結果的に裁判所は、原告の上記主張をすべて排斥しました。以下で理由も含め、詳細な内容をみていきましょう。

2.本件ファクタリング契約は貸金契約ではない

裁判所はまず、本件のファクタリング契約を「貸金契約ではない」と認定しました。理由は以下の通りです。

2-1.本件の契約書は「売掛債権売買契約証書」であり、内容としては売掛債権を売買することが詳細に記されていた

そもそも契約書において「債権売買契約」とはっきり記されており、内容としても「売掛債権を譲渡する」とされていました。債権の支払期日、債権額などの詳細もきちんとつけられており、貸金契約とみなすべき記載は見当たりませんでした。

2-2.R社が危険を負担する内容になっていた

ファクタリング契約か貸金契約かを判定するときには「どちらが回収不能の負担を負うか」が重要なファクターとなります。利用者が危険を負う場合(いわゆる買い戻し特約がついている場合)には、貸金契約に近づきます。一方でファクタリング業者が危険を負う場合には、貸金契約とは大きく性質が異なってきます。
本件ではファクタリング業者であるR社が回収不能の危険を負っていたので、貸金契約とは異なると判断されました。

2-3.手数料の大小は「支払期日までの期間」に対応していない

貸金契約であれば、支払期日が先になればなるほど「利息の金額」が大きくなるはずです。しかし本件で設定された手数料は債務者の与信調査によって設定されたものであり、支払期日までの期間とは相関性がありませんでした。このことも、ファクタリング契約が貸金契約でないと判断される要因となったといえます。

2-4.R社は原告に対する与信調査を行っていない

貸金契約であれば当然利用者である原告の与信調査を行うはずですが、R社はそういった調査を一切行っていませんでした。

以上より本件ファクタリング契約は貸金契約ではなく、利息制限法の適用もないとされました。もちろん過払い金請求も認められず、原告の主張は排斥されました。

3.公序良俗に反しない

原告は、本件ファクタリング契約が暴利行為であり公序良俗違反であると主張。裁判所は以下の理由で、この主張も排斥しました。

3-1.そもそも本件ファクタリング契約は債権譲渡契約である

もしも本件ファクタリング契約が「貸金契約」であれば、手数料は高すぎたといえるかもしれません。しかし本件は債権譲渡契約です。そうであれば、手数料がある程度高くても暴利とは認められにくくなります。

3-2.手数料は82%~92%である

本件で実際に適用された手数料は、82%~92%でした。裁判所は、R社が危険を負担する債権譲渡契約である以上、暴利とまでは認められないと判断しました。

4.譲渡禁止特約違反でも無効にならない

原告は、本件で譲渡対象となった債権に「譲渡禁止特約」がついていたため、ファクタリング契約が無効となると主張していました。しかし裁判所は以下のように述べてこの主張も排斥しました。

4-1.そもそも譲渡禁止特約の無効を主張するのは債権者ではなく債務者である

譲渡禁止特約の無効を主張して利益を得るのは、債権者ではなく債務者です。債権者は譲渡した本人なので、後になって無効を主張することは原則としてできません。

4-2.特段の事情がない限り、債権者は無効を主張できない

「債務者が譲渡の無効を主張することが明らか」など特段の事情がない限り、譲渡した本人である債権者は譲渡禁止特約違反による無効を主張できない、とする判例があります(最高裁平成19年(受)1280号 平成21年3月27日判決)。

なお近年の民法改正により、債権の譲渡性がさらに高められています。譲渡禁止特約つきの債権譲渡も基本的には有効であり、単に「悪意重過失の譲受人には弁済を拒める」だけになっています(民法466条3項)。

以上のように、本件では原告の主張はことごとく排斥され、ファクタリング会社であるR社が全面的に勝訴しました。

5.本件から学べること

他のファクタリングに関する裁判と同様、本件でも「ファクタリング契約は実質的に貸金契約である」という主張が排斥されています。

実際、多くの中小事業者はファクタリング業者相手の裁判において「貸金契約であり、利息制限法違反」という主張を行います。しかし利用者側に危険を負担させる「買い戻し特約」がついていない限り、ほとんど認められないのが現状です。
また本件では公序良俗違反や譲渡禁止特約違反の主張も認められていません。こうした主張を後から行っても、訴訟で勝つのは難しいと考えるべきでしょう。
「ファクタリングは違法」と思い込んで訴訟を起こしても、時間や労力、弁護士費用が無駄になってしまう可能性が高いといえるでしょう。ファクタリング契約自体は、何ら違法なものではありません。本サイトでご紹介している裁判例を参考にして、上手にファクタリングを利用しましょう。

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