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金融裁判事例

事案の見解

ファクタリング会社との和解契約が無効と判断された事例

(東京地方裁判所 令和元年(ワ)13662号 令和2年7月16日判決言渡し 解決金請求事件)

ファクタリングを利用した企業が期日までに回収した債権を支払えなかったため、ファクタリング会社と利用企業が「和解契約」を締結した事例があります。

ファクタリング会社が利用企業に対し、和解契約にもとづく「解決金」として、回収不能となった債権の支払いを求めたものです。

利用企業は和解契約とおりに解決金を支払わなかったため、ファクタリング会社は訴訟を起こしました。

裁判所は和解契約を無効と判断し、ファクタリング会社側の主張を排斥する判断を下しています。

今回は、ファクタリング会社と利用企業が和解契約を締結した経緯や裁判所がなぜファクタリング会社の主張を認めなかったのか、解説します。

1.事案の経緯

本件の原告はファクタリング会社で、被告はファクタリングを利用した企業とその代表者です。原告と被告会社は継続的にファクタリング取引を行っていました。

ファクタリング契約

平成30年5月、被告会社は原告に対し2800万8000円の債権を譲渡し、譲渡代金として2240万円を受け取りました(譲渡債権1)。
平成30年6月には被告会社が原告へ2628万3200円の債権を譲渡、譲渡代金として2100万円を受け取りました(譲渡債権2)。

本件のファクタリング契約では、債権回収は被告会社が行い、回収した債権を原告へ支払う内容となっていました。また被告会社は譲渡債権に無効、取消、相殺、譲渡禁止特約などの抗弁事由がないことを保証。抗弁事由などによって第三債務者から債権が支払われない場合、原告はファクタリング契約を解除できると定められていました。

被告会社による不払い

譲渡債権1について、被告会社は取引先から442万9000円しか回収できなかったため、原告へも442万9000円しか支払えませんでした。
譲渡債権2については、被告会社は原告へ一切支払いができませんでした。

和解契約

もともとのファクタリング契約によると、原告は本来被告会社から5429万1200円の支払いを受けられるはずです。しかし実際には442万9000円しか支払われなかったので、4986万2200円が未払いの状態になりました。

また原告と被告会社の契約では遅延損害金割合が年率15%とされていたので、208万7348円の遅延損害金が発生していました。

そこで原告は被告に対し、上記合計額の概算として5200万円の支払い義務を認めるよう要求し、両者の間で「5200万円を解決金として支払う」和解契約が成立しました。被告の代表者は和解契約の連帯保証人となりました。

被告による解決金支払い拒否

しかしその後、被告らは解決金5200万円の支払いをしなかったため、原告は本件訴訟を提起しました。

2.原告(ファクタリング会社)の主張

原告としては、本件和解契約は有効なものであり、被告らに対して5200万円の請求権を有していると主張しました。
また和解契約のもととなったファクタリング契約は債権譲渡契約であり、金銭消費貸借ではないと主張し、公序良俗違反や利息制限法違反も問題にならないと述べました。

3.被告(利用企業)の主張、反論

被告らは以下のように反論しました。

和解契約のもととなったファクタリング契約は金銭消費貸借契約

原告と被告会社との間のファクタリング契約は、実質的に金銭消費貸借契約であると主張しました。
被告会社は原告に対し、譲渡債権に抗弁事由などがないことを保証しており、不払いが発生したときには原告が契約を解除できることになっていましたし、原告には譲渡債権の償還を求める償還請求権が認められていたためです。
これでは債権回収できなかったときのリスクを被告会社が負う結果になってしまいます。
また平成29年8月から平成30年4月までの9回にわたって継続的に取引していた事情からしても、金銭消費貸借契約に類似する、と主張しました。

支払い義務は存在しないか、あるとしても減額されるべき

本件ファクタリング契約の手数料を年率に置き換えると極めて高額で、137~140%にもなります。これは明らかに公序良俗違反であり、ファクタリング契約は無効とすべきです。
仮に無効でなくても利息制限法へ引き直し計算すると、被告会社が原告へ返還しなければならない金額は2192万9370円にとどまる、と主張しました。

以上、被告としては「基本的には支払い義務がないが、仮に支払うとしても2192万9370円に減額すべき」と結論づけました。

4.裁判所の判断

裁判所は以下のように述べて、和解契約は無効と判断しました。

和解契約の「互譲」の要件を満たさない可能性がある

裁判所は、本件和解契約は「互譲」の要件を満たさない可能性があると指摘しました。
「互譲」とは「お互いが譲り合う」という意味です。
和解というからには、双方が譲り合う必要があり、一方のみが有利になっては「和解契約」が成立しません。
ところが本件の和解契約では、原告が一方的に有利になっていて譲った部分がないために無効ではないか、と指摘されたのです。

本件ファクタリング契約は実質的に金銭消費貸借契約

裁判所は本件のファクタリング契約について、実質的に金銭消費貸借契約と判断しました。
契約では、被告会社が譲渡債権に抗弁事由などの瑕疵がないことを保証するばかりか、第三債務者が支払わなかったときには原告が解除できると定められていたからです。
また第三債務者が期日までに支払わなかった場合、原告は譲渡債権に瑕疵があったとみなして被告会社へ償還請求できるとも定められていました。これでは不払いリスクを負うのは被告会社であり、原告ではありません。
譲り受け会社が不払いリスクを負わないファクタリングは実質的に金銭消費貸借契約といわざるをえないため、本件のファクタリング契約も金銭消費貸借契約と認定されました。

本件で設定されたファクタリング契約の年率は137~140%にもなり、極めて高額なので、貸金業法によって無効になります。

和解契約は公序良俗違反で無効

ファクタリング契約が無効になるため、原告が被告会社に請求できる金額は、実際に被告会社へ交付した4340万円から既払い金442万9000円を控除した3897万1000円が限度です。それにもかかわらず5200万円もの支払い義務を承認させることは、公序良俗違反といえ、和解契約そのものが無効になると判断されました。

以上により、原告の請求は無効な和解契約にもとづくものとして「認められない」と判断され、全部棄却されました。

5.本件から学べること

本件では、ファクタリング契約に「保証条項」や「不払いとなったときの解除権、償還請求権」がついていました。
こういった条項があると、ファクタリング会社が不払いリスクを負わないので「実質的に金銭消費貸借契約」と判定される可能性が極めて高くなります。

本件では不払いが起こった後にあらためて「和解契約」が締結されていますが、もととなったファクタリング契約が無効となった影響で、和解契約も公序良俗違反となって無効と判断されています。
いったん違法なファクタリング契約を締結したら、それにもとづいて高額な解決金を定める和解契約を締結しても無効になるリスクが高いといえるでしょう。

ファクタリング会社を選ぶときには、買戻特約だけではなく償還請求権や解除できる条件などにも注目し、利用企業に一方的な負担を負わせていないか注目すべきです。今後の参考にしてみてください。

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