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金融裁判事例

事案の見解

ファクタリング会社に対する過払い金請求の控訴が棄却された裁判例~東京地方裁判所平成27年(レ)第26号 平成27年5月21日判決言い渡し~

ファクタリングを利用した会社が後にファクタリング会社に対し「取引は実質的に貸金契約であった。利息制限法を超過するため過払い金を返還すべき」と主張し始めるケースがよくあります。

本件は、一審で利用会社による過払い金請求が認められなかったために控訴された事例です。

控訴審である地方裁判所もやはり、一審の判断を支持し、利用会社による控訴を棄却しました。

以下でどういった内容だったのか、裁判所の判断の理由を含めて確認しましょう。

事案の概要

本件の控訴人は建設業を営む会社、被控訴人はファクタリング会社です。

控訴人と被控訴人は平成25年10月から12月にわたって計3回、ファクタリング取引を行いました。譲渡された債権は、いずれも控訴人の取引先に対する請負債権です。控訴人に対しては、以下のとおり手数料や諸費用が差し引かれた金額が支払われました。

  • 1回目…譲渡債権の額面額74万3720円、控訴人へ支払われた金額は47万8551円(手数料の他、登記費用として5万円を差し引き)
  • 2回目…譲渡債権の額面額70万4677円、控訴人へ支払われた金額は51万9338円
  • 3回目…譲渡債権の額面額40万7261円、控訴人へ支払われが金額は30万6729円

ファクタリング契約の条件

控訴人と被控訴人とのファクタリング契約においては、以下のような条件が取り決められていました。

取引先からの回収は控訴人が行う

譲渡された請負代金の回収は控訴人が行うものとして、代理受領委託契約が締結されました。

被控訴人に償還請求権は認められない

取引先が不払いを起こして債権が回収不能となったとしても、被控訴人は控訴人へ償還請求できないことが明確に定められていました。

控訴人の責任で業務委託契約が解除された場合、違約金が発生する

控訴人の責任によって代理受領の業務委託契約が解除された場合には、控訴人は被控訴人へ違約金を支払わねばならないことが定められました。

控訴人は取引先から債権回収を行い、契約内容に従って被控訴人へと支払いをしました。

ところがその後、控訴人は「本件の一連のファクタリング取引は実質的に金銭消費貸借契約である」として利息制限法による引き直し計算をすべきと主張し始めました。過払いとなった13万円あまりの請求を求めて裁判所へ提訴したのが本件の一審です。

争点

本件の主な争点は控訴人と被控訴人とのファクタリング取引の法的性質であり「金銭消費貸借契約」か「債権譲渡契約」かが問題となりました。

控訴人の請求

控訴人は「取引は実質的に金銭消費貸借契約なので利息制限法が適用される」と主張しました。

本件の3回の取引に利息制限法を適用すると、13万3364円の過払い金が発生する計算となります。

そこで控訴人は被控訴人へ、不当利得の返還請求として13万3364円の支払いを求めました。

被控訴人の主張

ファクタリング会社である被控訴人は「本件取引は債権譲渡契約である」と主張し、控訴人の請求を否定しました。

主な理由は以下の通りです。

  • 契約書には「実質的な消費貸借契約や債権譲渡担保契約、質入契約などではなく、真正な債権譲渡契約である」と明示されている
  • 被控訴人において償還請求権がないことも明確に規定されていて、被控訴人が取引先の不払いリスクを負っている

原裁判所の判断

原裁判所は「本件取引の性質は債権譲渡契約である」と認定し、控訴人の請求を棄却しました。

控訴人が納得せずに控訴したのが本件です。

控訴審の判断

控訴審も原審と同様に本件のファクタリング契約は債権譲渡契約であると認定しました。

主な理由をみてみましょう。

  • 本件取引を開始する前、被控訴人は控訴人に対し「債権買取りの方法によって資金の融通を行う」と説明しており「貸付」は前提となっていない
  • 本件の取引における売買契約書には、対象債権について「控訴人の有する債権の売買である」と明記されている
  • 譲渡債権に関して取引先が不履行となったり回収不能が確定したりしても、被控訴人が控訴人へ償還請求できないことが明記されている
  • ファクタリング契約では、債務不履行が発生しても債権売買の効力に影響がないことを特に確認している
  • 不払いや債務不履行のリスクはファクタリング会社である被控訴人が負担している
  • ファクタリングの手数料が比較的高額なのは、被控訴人が取引先の不払いリスクを負うためやむをえない

以上のような事情からすると、控訴人と被控訴人との間の取引は「債権譲渡」といえ、利息制限法の適用はないと判断されました。

よって控訴人が被控訴人へ支払った弁済金について利息制限法による引き直し計算は行われず、過払い金請求権も認められないと認定され、控訴人の控訴は棄却されて裁判が終結しました。

本件裁判から学べること

本件では、ファクタリングを利用した会社がファクタリング契約の法的性質を争い、ファクタリング会社へ過払い金請求訴訟を起こしています。

しかし裁判所は、原審も控訴審も控訴人の主張を認めず棄却しました。控訴人が敗訴した主な理由は、取引先の不払いリスクをファクタリング会社が負担していたことです。

ファクタリング契約の法的性質の判定基準

一般的に、ファクタリング契約が金銭消費貸借契約か債権譲渡契約かは、取引先の不払いリスクを誰が負担するかによって判定されます。

債権譲渡といえるためには、不払いリスクをファクタリング会社が負わねばなりません。ファクタリング契約で償還請求権を規定したり買戻特約を入れたりすると、不払いリスクを利用会社に負わせる結果となるので、契約の性質は「金銭消費貸借契約」と認定されやすくなります。一方、ファクタリング会社が不払いリスクを負うことが明確になっていれば、ファクタリング契約は通常、債権譲渡契約と認定されます。

本件でも「償還請求権がない」と明確に規定されており、不払いリスクは最終的にファクタリング会社が負う旨が明らかにされていたので、契約の性質は「債権譲渡」と認定されました。

なお不払いリスクの負担者については「実質的に」判断されます。たとえ契約書の表題が「債権譲渡契約」となっていても、内容的に不払いリスクを利用会社に負担させるものであれば金銭消費貸借契約と認定される可能性が高くなります。

また償還請求権や買戻特約以外にも、利用会社による過度な保証条項をもうけると、不払いリスクを利用会社に負わせていると認定されるケースもあります。

ファクタリングを利用する際の注意点

資金調達のためにファクタリングを利用する際には、契約書にサインする前に内容をよく確かめてみてください。利用会社に取引先からの不払いリスクを負わせるような内容の契約書となっているなら利用会社に不利です。そのファクタリング業者には申し込みをしない方がよいでしょう。

ひとことでファクタリング会社といっても、いろいろな業者があります。本件の被控訴人のように「償還請求権」「買戻特約」のついていない、クリーンなサービスを選ぶと安心でしょう。今後の参考にしてみてください。

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