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社長の見解

【軽貨物運送】のケース

平成25年7月に軽貨物運送業者として会社を設立し、国内の大手物流業者から仕事を請け負って契約ドライバーで配送を行うスタイルにより営業を展開していたS物流株式会社が、令和3年3月自己破産申請の準備に入りました。

S物流株式会社は、自社商品をインターネット上の運営ウェブサイトで販売するECサイトで出品されている食品・薬類・雑誌などの配送物を物流センターから個人宅または事業所まで配送するサービスを手がけていた会社です。

そもそもS物流株式会社は北関東地区に営業所を開設しており、エリア内や埼玉・東京都内を主体として業容を拡大させ、平成30年6月期年収入高は約6億円と順調な業績だったといえます。

しかし受注単価は厳しい状態が続き、収益で苦戦続きの状態となり、税金滞納や支払い遅延といったことが頻繁に起きるようになってしまいました。

資金繰りが悪化したことで対外信用も著しく低下する中、新型コロナウイルス感染拡大の影響により主力とされていた得意先との取引も急速に減少してしまい、事業を続けることも難しく今回の事態に至ったようです。

本来であれば、コロナ禍による巣ごもりなどの影響により、軽貨物運送の配送需要は高まっているため、軽貨物運送は業績にもそれほど影響はないのではないかと考えられます。

実際、コロナ禍の影響を受けているのはBtoBという企業間メインのケースであり、一般貨物を扱う運送事業者と同じ状況です。

しかしBtoC(企業と消費者)の荷物は需要が伸びているため、人手不足に苦慮しながらもネット通販の利用増しや在宅勤務の広がりなどで軽貨物運送の倒産件数は減少傾向にあります。

ただ、軽貨物運送業は過小資本で経営体力が乏しい中小・零細企業が多いため、コロナ禍の宅配需要は高まったとしても人手不足や燃料高騰といった収益課題も解決できていなければ、収束しない新型コロナの影響で息切れ倒産してしまう可能性も十分あります。

S物流株式会社の場合も、主力だった得意先との取引が急速に減少したことが自己破産に至った大きな原因といえますが、それ以前にコロナ禍での資金繰り策がうまくできていなかったと考えられます。
もともと軽貨物運送業は人手不足が続く業界のため、資金も確保できない中では思い切った設備投資は検討しにくくなります。

今後、軽貨物運送市場への参入が増加すれば競合激化してしまい、環境の暗転によって倒産してしまう企業は増えてしまうかもしれません。

どのような産業においても、需要が高まっているからと安心するのではなく、資金繰り策を十分に行っておくことが必要といえます。

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