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金融裁判事例

事案の見解

記事名ファクタリング3社に対する不法行為にもとづく損害賠償請求が棄却された事例(大阪地方裁判所 令和3年11月26日 令和2年(ワ)第5056号)

ファクタリングを利用して資金調達した企業が後にファクタリング会社に対し「取引は実質的に金銭消費貸借契約である」と主張し始めるケースが多くみられます。

本件は多数のファクタリング会社を利用した自動車会社がファクタリング3社に対し「ファクタリングは金銭消費貸借で手数料が高額に過ぎ暴利行為で公序良俗違反、不法行為を構成する」として損害賠償金を請求した事例です。

裁判所は原告の請求を棄却しました。

以下で経緯や争点、裁判所の判断内容を解説します。

1.当事者

原告はファクタリングを利用して資金調達した自動車会社です。

被告はファクタリング業を営む3社とその代表者です。

この記事では被告3社をそれぞれY社、A社、R社と表記します。

2.経緯

原告は平成29年ころ、資金調達に利用できるファクタリングサービスを知り、多数のファクタリング会社で資金を調達してきました。そのような中、被告ら3社とも取引を行うこととなったものです。

Y社との取引

Y社との間では平成30年9月から平成31年4月まで、継続的に取引が行われました。

その際の主な条件を示します。

  • 取引先からの回収は原告が行う
  • 回収できたときにはすぐにY社へ振り込む
  • 回収できなかった場合にはただちにY社へ報告する

原告はY社から資金調達を受け、取引先から回収した金員として合計1048万円をY社へ支払いました。

A社との取引

A社との間では平成31年4月から令和元年7月まで、継続的にファクタリング取引が行われました。

契約では以下のような取り決めがなされていました。

  • 契約の性質は売掛金債権の売買であり、債権担保契約や質入れ契約でないことを相互に確認する
  • 第三債務者が支払いをせず履行不能となってもA社は償還請求ができない
  • 回収事務は原告が受託して行う

原告はA社から資金調達を受け、取引先から回収した合計313万円をA社へ支払いました。

R社との取引

R社との間では、令和元年6月と7月に取引が行われました。

契約内容として、以下のような事項が定められていました。

  • 取引先からの回収は原告が受託して行うこと
  • 原告は第三債務者の資力について保証せず、回収不能となった場合の危険を原告が負担しないこと

原告はR社から資金調達を受け、取引先から回収した合計238万円をR社へ支払いました。

原告の経営破綻と提訴

原告は令和2年2月頃、資金繰りが続かなくなって事実上の倒産状態に陥りました。

原告は「被告ら3社との間のファクタリングは公序良俗違反に反して無効」と主張し、支払った金額の返還を求めて本件の訴訟提起を行いました。

3.争点

本件の争点は以下の4点です。

ファクタリング契約は金銭消費貸借契約か

まず本件で3社と締結されたファクタリング契約が金銭消費貸借契約か債権譲渡契約かが問題となりました。

原告としては以下の理由により、ファクタリング契約は金銭消費貸借契約であると主張しました。

  • 本件では原告が回収事務を受託しており、取引先が支払いをしないときのリスクを第一次的に原告が負っていた
  • 債権譲渡の外観は、原告が支払いをしないときの担保に過ぎない
  • 金融庁は給与ファクタリングを貸金業に該当すると発表しているが、本件のファクタリング契約も給与ファクタリングと基本的に同じである

ファクタリングは公序良俗違反に反して無効か

原告は「3社とのファクタリング取引は金銭消費貸借契約に該当する」とした上で利息制限法の制限利率を大幅に超過するので「公序良俗に違反する」と主張しました。

なお3社の手数料を利息制限法に引き直すと、以下のとおりです。

  • Y社との取引…年率304~961%
  • A社との取引…年率300~600%
  • R社との取引…年率190~300%

このように本件ファクタリングの手数料は利息制限法の制限利率を大幅に超過する「暴利」であり、契約自体が公序良俗に反して無効という主張です。

また貸金業法違反、出資法違反の犯罪行為をおこなった被告らに不法行為が成立するため「弁済した金額」を損害として、賠償金の支払いを求めました。

  • Y社への請求額…1048万円
  • A社への請求額…313万円
  • R社への請求額…238万円

被告らの代表者は共同不法行為者か

原告はY社、A社、R社それぞれの代表者個人も被告として訴えました。

理由は、代表者らが自らファクタリング取引に関与し、あるいは従業員に不法行為をさせて「共同不法行為」が成立するからです。

損害額

原告は被告らに対し、支払った弁済額だけではなく慰謝料と弁護士費用も請求しました。

4.被告らの反論

被告らは、原告の主張を全面的に否定し争いました。

3社とも「取引先の不払いリスクはファクタリング会社が負っており、ファクタリング契約の法的性質は債権譲渡契約である」と主張、利息制限法や出資法、貸金業法の適用はなく暴利行為にもならず、公序良俗違反も成立しないと述べました。

不法行為も成立しないので、被告ら3社も代表者らも責任を負わず、損害賠償金の支払い義務が発生しないという結論になります。

5.裁判所の判断

取引の法的性質は債権譲渡である

裁判所はY社、A社、R社すべての件について「ファクタリング契約は債権譲渡契約である」と判断しました。

主な理由は以下のとおりです。

  • 取引先の不払いリスクをファクタリング会社が負っている
  • 本件で原告自身の与信審査が行われた証拠はない
  • 取引先が不払いを起こしたときに原告が代わりに支払わないと「取引先にファクタリングの利用を知られて信用が失墜する」としても、原告が法的に支払い義務を負うわけではない
  • 本件の取引は給与ファクタリングではない

ファクタリングは公序良俗違反にならない

本件取引において設定された手数料の割合は、債権譲渡契約におけるものとして暴利とはいえないと判断されました。

なお3社の手数料割合は以下のとおりです。

  • Y社…80~83%
  • A社…9~80%
  • R社…80%

不法行為を構成しない

以上のようにファクタリング取引が合法的な債権譲渡契約であり、被告らが原告に契約締結を強要したなどの事情もみられないので、被告3社には不法行為が成立しません。

もちろん被告3社の代表者らにも共同不法行為は成立しません。

原告による損害賠償請求は全面的に棄却されました

6.本件から学べること

本件で、原告は多数のファクタリング会社で取引を行って最終的に破綻状態に陥り、ファクタリング会社へ賠償金を請求しましたが、全面的に棄却されています。

3社いずれの取引においても買戻特約や償還請求権などの取り決めがなく、取引先の不払いリスクをファクタリングが負っていました。

このように、取引先の不払いリスクをファクタリング会社が負っている場合、基本的にファクタリング契約の法的性質は債権譲渡契約と認定されます。

一方、買戻特約などがついていて不払いリスクを利用会社に負わせると法的性質が貸金契約と認定されやすくなります。

また本件で原告は「給与ファクタリングは貸金契約である」との主張も行いましたが、裁判所は「事業者のファクタリングと給与ファクタリングは異なる」とも認定されました。

給与ファクタリングは基本的に違法ですが、事業者の資金調達方法としてのファクタリングは合法なケースが多いので、混同しないよう注意すべきです。

さらに本件では、ファクタリングの手数料について、76~83%程度であれば暴利とはいえないとも判断されたことにも注目すべきといえるでしょう。

今後の資金調達の際の参考にしてみてください。

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