社長の見解

【倒産事例】クリニックのケース

平成21年に設立した医療法人Iは、2020年12月に地裁より民事再生法の適用を申請し、監督命令を受けた後に再生手続き開始決定を受けました。

 

患者さんそれぞれの免疫機能を活かしてワクチンを独自につくるといった特殊ながん治療法で知られる免疫療法専門のクリニックとして知られている医療法人です。

 

もともとはジャスダック上場のT株式会社から技術やノウハウなどに加え、建物や設備は転貸・貸与を受ける形で運営していました。

 

平成23年3月期の年間収入高は約14億9千万円を計上していますが、財務面では債務超過の状態が続いていたようです。

 

T株式会社へ支払う転貸料や継続的対価なども不払いとなり、平成30年末には取引関係も解消されています。

 

医療法人Iでも人事改革や店舗を移転させるといった体制そのものを変え、運営の立て直しを図ってしました。しかし努力も思うように結果に結びつかず、令和2年3月期の年間収入高は約8億円にとどまることとなり、欠損計上で累積損失もさらに大きくなってしまいます。

 

長く続いた資金繰り悪化は解消されることなく、一部クリニックを他社に譲渡するなどで、約1億1千万円の負債を抱え今回の手続き開始決定に至ることとなりました。

 

今回、医療法人Iが扱っていたテーラーメイドがん免疫療法で使用されるワクチンは、患者さんごとに合ったものがつくられます。

 

免疫活性が上昇しそうなワクチン候補を数種類選んでいくようですが、候補から実際の新薬になるまで検証を幾度か重ねていくことが必要となるようです。

 

臨床試験は自由診療となるため費用の一部は患者さんが自己負担することになり、ワクチン投与には1回10万円程度かかるため、1クール6~8回投与となれば60~90万円の費用が必要になります。

 

新型コロナウイルス感染拡大により、様々な産業や事業がその影響を受けることとなりましたが、それは治療を受ける患者さんも同じこと。収入減などで高い治療代を支払うことができなくなった患者さんなども増えてしまったのでしょう。

 

そもそもコロナ感染を恐れて医療機関の受診を控える方も増えてしまったため、債務超過や資金繰り悪化していた医療法人Iには新型コロナが大きな打撃という結果に。

 

公立病院などでも受診控えにより、医業収支は前年度よりマイナスになったというケースは少なくありません。大学病院だけで年5千億円減収したという試算も出ていますが、これは2020年6月の段階での試算なので、2021年1月時点ではさらにその状況が悪化していると考えられます。

 

緊急性のない胃カメラなどの検査や手術などは控えるといった対応を行ったことで、患者数減少や収入急減につながってしまったようです。それに加え医療用マスクや手袋などが一時高騰したこともあり、コスト高による支出増も資金繰り悪化に大きな影響を及ぼしたといえます。

 

新型コロナウイルス感染拡大より、新規感染者や重傷者が増加しており、医療もひっ迫している状況です。

 

ただ患者の受け入れに関係なく、赤字経営だった医療機関の医業収支は赤字拡大となり、コロナ前は黒字経営だった医療機関も赤字に転じてしまっている傾向も見られます。

 

第3波はこれまでにない勢いで感染を拡大させている状況であり、まだまだ医療機関は厳しい状況に立たされることが予測されます。

 

債務超過や資金繰り悪化を放置させず、早めに改善させておけば医療法人Iも今回の手続きにまでは至らなかったのかもしれません。

 

もともと2019年1月の段階では新型コロナウイルス感染拡大で今のような状況になることは誰にも予想できなかったはずです。

 

このような有事が発生したときでも事業を続けることができるように、悪化してしまった資金繰りや財務状況は早めに改善させること、手元の資金をショートさせないことがより重要といえます。

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